芸能人のYouTube参入が当たり前になり、テレビで人気の方々や有名な方々も多くチャンネルを開設しています。



 お笑い芸人だと、オリエンタルラジオの中田さんやカジサックこと梶原さん、最近では宮迫さんや江頭2:50さん、直近では渡辺直美さんがYouTubeにチャンネルを開設しました。ベテランの方々も含めて、コントやトークを中心としたコンテンツを発信しています。

 嵐、Snowman、草なぎ剛さん、香取慎吾さん、赤西仁さんと錦戸亮さんなど、ビッグネームの方々も含めて個人やグループでチャンネルを開設し、人気を博しています。元モーニング娘。の辻希美さんのチャンネルも人気ですし、最近では後藤真希さんがチャンネルを開設しました。女優や俳優では、本田翼さん、川口春奈さん、ローラさんなど著名人の方々も増え、佐藤健さんはチャンネル開設1カ月で登録者数は180万人を突破しています。

 朝倉未来さんやダルビッシュ有さん、本田圭佑さんや前田健太さんなど、世界的に有名なスポーツ選手の方々も、YouTubeで発信しています。

 以前は、YouTubeに進出することは、テレビからネットへの「都落ち」というイメージをもたれることもありましたが、現在では、YouTubeは芸能人の新たな発信の場として市民権を得ていると思います。

「芸能人がYouTubeに参入する」状況について、YouTuberとしてどう思うか、2年ほど前から尋ねられる機会が多くなりました。実力のあるYouTuberは危機感を抱かないと回答します。テレビとYouTubeは全く異なるメディアであり、芸能界で成功するこつとYouTubeで成功するこつは、重視するポイントが異なるからです。

 事実、ネームバリューが抜群の芸能人の方々のチャンネルでも、再生回数や登録者数がふるわないチャンネルも多くあります。テレビでの知名度が、YouTubeでの人気に直結するわけではないからです。

 YouTubeは、「誰にみせるか」をピンポイントに設定して動画を作る必要があります。多くの層が見るテレビと違い、YouTubeのターゲットは非常に細分化されています。芸能人や有名人の方々も、自分のファン層を把握し、明確にターゲットに向けて発信する必要があります。

 これができずに企画がぶれたり、イメージを重視して熱心に取り組まない人が多いのです。プロのYouTuberはもともとは素人ですが、熱心さやマーケティング能力が優れているので、知名度がある有名人や芸能人が参入しても脅威にならないのです。

 芸能人がYouTubeに参入して本当に困るのは、Youtuberではなく芸能事務所だと思います。インターネットが普及する前は、テレビは絶対的なメディアで、「テレビに出ない」ということは、この世から忘れられる、消えてしまうという大きなインパクトをもたらしました。

 芸能は特殊なビジネスモデルです。事務所はタレントや芸能人を、多大なお金と労力と時間をかけて育成し、プロモーションします。芸能人は人気になったら、事務所が次世代を育成する資金を稼ぐ必要があるので、本人の取り分は少なくなります。これを芸能人が多く持っていくことは、恩を仇で返す形にもなり、事務所は困るのです。

 ところが現在、SNSやYouTubeなど、芸能人が活躍したり発信する場所はテレビだけに留まらなくなりました。インターネットでは、テレビのように事務所が圧力をかけて「干す」ことができません。令和時代の「この世からいなくなること」は、「テレビに出ない」ことではなく、「Googleの検索結果に出ない」ことです。

 テレビでは関係者が結託してキャスティングの采配をすることができましたが、インターネット、特にYouTubeでは実力のある人や数字がある人が多く露出します。これを決定しているのは人ではなくアルゴリズムと呼ばれる人工知能です。YouTubeは公平な実力主義で、誰にもこびずに知名度を上げて活動することができる場です。

 YouTubeはテレビと違い、「干す」ことも、人気をでっち上げることも、ごまかすこともできません。演者やコンテンツの人気は、明確に再生回数や登録者数の数字となって現れます。アルゴリズムと呼ばれる人工知能が管轄しているので、関係者で結託して干すこともできません。

 YouTubeに進出している芸能人の方々の中には、芸能事務所をやめた方もいます。テレビでは見ることが少なくなった方もいます。インターネットが発展する前の時代であれば、「干された」状態になっていたであろう方々もYouTubeで活動しています。

 この状態は、芸能事務所にとっては恐ろしいことの一つです。事務所によりますが、芸能人の雇用契約の縛りの期間は、現在、最長5年程度までとなっています。芸能事務所が多大なお金や労力や時間をかけて育成し、テレビで人気者になったタレントや芸能人が、5年程度で事務所をやめて、得たネームバリューをもとにインターネットで活躍することが増える可能性もあります。芸能人やタレントがテレビ以外にもインターネットで活躍する選択肢が出てきたことは、業界の慣習や状態も変革させます。

 契約や「干す」ことで縛るのではなく、タレントや俳優を大切にする事務所が生き残るようになります。芸能人は、自分を大事にする事務所であれば所属し続けます。そうすれば、インターネット上で活躍して、より多くの仕事や収益を上げることができ、事務所にとってもプラスとなります。

 YouTubeは、芸能界や事務所のあり方にも変化をもたらしているのではないかと、多くの芸能人や有名人のチャンネル開設を見て思っています。

◆プロフィール
なーちゃん/二児のママ兼YouTuber。2014年にチャンネルを開設。長男・こうちゃんと出演する動画は子どもから親まで幅広い層から人気を集め、”ファミリー系YouTuber”としてカリスマ的存在に。登録者数は221万人(2020年5月時点)を誇る。