<今、この中で話題になっているのが、1人10万円の給付金です。ここの居る懲役の大半はお金がなくこの中で生活する日用品すら買えないのが実情です。だからパンツやシャツを買うぞと楽しみにしている人や娑婆に出て使おうという人もいます>

 こんな手紙が記者のもとに届いた。便箋の下には小さな桜の押印がある。発信者は神戸刑務所に収容されている受刑者だ。

 新型コロナウイルスの経済対策として、全国民に一律支給される10万円は、受刑者や逮捕されて拘置所にいる未決者もその対象だという。 近畿地方の拘置所で、男性収容者に面会して話を聞いた。

「拘置所にいると10万円給付は貰えないと諦めていました。すると同じ部屋の未決者が『リーマンショックがあった09年も、自分は拘置所にいたが、1人あたり1万2千円の給付金を貰えた』と教えてくれました。さらに『役所に拘置所にいると手紙を書けば、申請書がもらえる。その時はお金は現金書留で送られてきて、刑務所が領置金として預かってくれた』と聞かされました。経験者はよく知っていますね」

 ちなみに拘置所内でのコロナ対策は布マスクが配布され、三密にならないようにこれまで6人1部屋で収容されていたところを、3人程度に減らしているそうだ。食事も、向かい合わせで食べず、会話もしないようにと指導されているという。
 
 拘置所の場合、刑が確定していないのである程度、外部への手紙は自由に発信できる。だが、刑務所の受刑者の場合、発信できる手紙の数などに制限があり、状況が違うようだ。西日本のある刑務所の場合、収容者の大半が長期の受刑者だ。ある受刑者は高い塀で閉ざされた刑務所の内情を教えてくれた。

「刑務所が10万円を受け取りたい人をとりまとめて、自治体から申請書を取り寄せてくれると聞いています。そこに記入して、返送すれば、10万円が貰えるそうです。ここの刑務所は短い人でも懲役10年以上。私はどうしても読みたい本を2、3冊買いたい。しかし、70歳近い無期懲役の人と話すと『ずっと刑務所、一生刑務所だろうから、10万円も一度にいただけるチャンスは二度とない。今後のため日用品の最低限のものを買うだけ』と話していた。また『切手がなくて被害者にお詫びに手紙を長く書いていないので、許可が出れば発信したい』という人もいました」

 刑務所の場合、毎日、作業があり拘置所以上に規則、規律が厳しい。コロナ対策はどうなのか?

「布マスクが配られ、毎日、洗濯して使っている。毎朝、点呼や工場に行くときは行進しながら、大きく掛け声を出すのが刑務所の決まり。けど、コロナ以降は飛沫が危ないと掛け声は出さないように命じられて静かです。刑務所は外部との接触がほとんどないから、コロナに感染する可能性は低いとけっこう安心感がありますね」

 西日本のある刑務所の刑務官はこう話す。

「確かに、10万円の話題で持ちきりだ。拘置所、刑務所ではとても使いきれない金額。受刑中は節約して、出所した時に有意義に使うよう指導をしています。しかし、みんな浮かれていて、カタログなど取り寄せ、品定めしていますよ」

 刑務官によると、中には「給付金10万円がもらえるなら借金をかえせ」と受刑者に手紙を寄こす人もいるという。
 刑務官はそうした手紙は「なるべく見せないようにしています」と話した。(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事