どんなに感染拡大を徹底しても、リスクはゼロにならない――。そんな意識を前提に子どもたちの活動を制限せず、バランスよく対策を講じるべきという見解を示す専門家もいる。再開された学校で感染拡大が起きた場合でも、即時閉鎖は望ましくないという。AERA 2020年9月28日号から。



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 感染を防ぐのが難しくても、過度に活動や生活を制限しない方が、子どもたちの成長や心身の健康に与える影響が少ないと訴える専門家が増えている。

 文部科学省による全国一斉休校措置などが解除され、学校が本格的に再開した6月1日から8月末までに感染が確認された児童や生徒は1166人、教職員は194人、幼稚園の関係者は83人だった。児童や生徒の感染源や感染経路は家庭内感染(56%)が最も多く、学校内は15%だった。

 ただし、学校内で感染が起きていないわけではない。特に寮のように、家庭と同様、子どもたちにとって生活の場となるところでは、大きなクラスターが発生することもある。

 島根県松江市の高校では8月、サッカー部の寮を中心に、100人以上のクラスターが発生した。松江市によると、まだ感染源は特定されていない。

■寮では健康管理を

 無症状や、サッカーの練習に参加するのに支障がないほど軽い症状の生徒が多かったという。寮ではどうすればいいのか。松江保健所の竹内俊介所長はこう語る。

「難しい。食堂などでなるべく3密を避けるよう心がけるのが基本。あとは、感染した生徒をなるべく早く見つけて、感染拡大を防ぐために、毎日、寮生の健康管理をしっかりすることが大切です。若者の場合、発熱はあまりないが、4割ぐらいは味覚・嗅覚に異常を覚えるというので、味覚や嗅覚に違和感のあった時にも申し出るよう、徹底するといいと思います」

 英国では、政府の主任医務官らが8月、学校再開にあたり声明を出した。世界的に大流行している中、「リスクゼロの選択肢はない」とした上で、学校に通わないことによる子どもにとっての不利益の大きさを強調した。同時に、子どもが感染して重症化するリスクや学校が地域の感染源の中心となる可能性は低く、教職員のリスクは他の職業と変わらないとした。

 この声明について、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの小野昌弘准教授(免疫学)はこう解説する。

「学校が閉鎖されていると、恵まれた環境にいて自宅でも勉強する機会のある子と、そうではない子の格差が拡大する。社会の格差や不平等性を是正するには、学校教育が不可欠だと英国では考えられている。それをよく表している声明だ」

 声明は、子どもたちが自宅にいることで心身の健康も損なわれていると指摘している。その一方で、学校を再開すると、地域によっては感染が拡大する可能性があるとも指摘している。休校中で子どもが家にいる間は自宅にいた保護者が、学校が再開すれば外に出るようになり、外から感染を家に持ち込むリスクは高まる。学校内でも感染がまったく起きないわけではない。

■生活と予防のバランス

 学校を再開して、感染が広まった場合、どうすればいいのか。

「またすぐに学校を閉めるのではなく、学校周辺の地域単位で、子どもが学校に行かない不利益、地域に感染が拡大するリスク、経済へのリスクなど、様々なリスクを評価した上で、対策を考慮することが大切だ」(小野さん)

 文科省も、学校の衛生管理マニュアルで、「どんなに感染症対策を行っても、感染リスクをゼロにすることはできないという事実を前提として」、対策をとることが重要だとしている。(ライター・大岩ゆり)

※AERA 2020年9月28日号より抜粋