田原総一朗「憲法改正・自衛隊の明記には9条2項の削除が不可避か」

田原総一朗「憲法改正・自衛隊の明記には9条2項の削除が不可避か」

 ジャーナリストの田原総一朗氏は、ハト派の論客が憲法9条2項を削除すべきと主張していることに対して、その理由を解説する。



*  *  *
 2017年の憲法記念日から、安倍晋三首相は憲法改正を打ち出している。9条1項2項には手をつけず、自衛隊の存在を明記するのだという。

 私は、現状では憲法改正は難しいと思う。自民党議員たちも憲法改正を唱えているが、本音では国民を説得するのは難しいと考えているのではないか。何人もの自民党議員に確かめたが、誰も自信は示さなかった。

 国民の半数以上が、改憲に消極的だと捉えているからである。多くの国民が、現憲法があるから日本の平和が維持できていると考えているのであろう。だからこそ、池田勇人以後の自民党の歴代首相は、誰一人憲法改正を打ち出さなかった。

 ところが、いわばハト派中のハト派であるはずの、井上達夫氏(東京大学大学院教授)と伊勢崎賢治氏(東京外国語大学大学院教授)が、何と憲法を改正すべきだ、と強く訴えているのである。しかも両者とも、憲法9条2項を削除すべきだと主張している。安倍首相も怖がって手をつけなかった問題である。

 井上氏は「9条2項があるために、安全保障政策についての実質的議論が棚上げされ、9条解釈の“神学論争”にすり替えられてきた。さらに2項で『戦力を保持しない』と明記しているために、戦力統制規範、つまり戦力が濫用されないように、戦力の編成方法や行使手続きを統制する規定が憲法に盛り込まれておらず、現状のままでは自衛隊を戦場に送り出すのは危険極まりない」という。

 また、伊勢崎氏は「自衛隊には『軍法』や『軍法会議』といった、戦争犯罪や隊員の過失を裁く仕組みがなく、PKOなどで隊員が誤って交通事故を起こした場合でも裁判にかけることができないため、深刻な外交問題を引き起こす。だから戦場に出るのはおろか、PKO部隊としても“使えない”のだ」と強調した。

 つまり、改憲をしないと自衛隊は憲法違反であるばかりか、国際法にさえ違反する存在だというわけだ。

 では、9条2項を削除して、どう変えるのか。井上氏は説明する。

「戦力統制規範の中身としては、最低限中の最低限の規定として、文民統制の規定が必要です。今の憲法には『文民条項』と呼ばれる66条2項がありますが、これは内閣総理大臣は文民でなければならないと規定しているだけ。文民である首相が軍隊の最高指揮命令権を持つ、とはっきり書いて初めて文民統制規定になるのですが、9条2項があるかぎり、今の憲法では規定できません。

 それから、武力行使には国会承認が必要だと規定するべきです。ただし、事後承認では駄目です。事後ということは、すでに戦争に突入しているということ。戦争を始めてから、国会の承認を得られないので撤退する、などということは不可能です。だから、武力行使の“事前”に国会が承認する必要があります。

 ただ、この場合の“事前”とは、何も他国の武力攻撃を待って、その後で悠長に国会で議論するという意味ではありません。もっと前の“事前”です。他国が日本を攻撃する意図を持ち、準備を始めているという明白な証拠を政府が国会に提出します。国会がそれを精査し、その通りだと判断すれば、他国が攻撃に着手したら間髪入れずに防衛出動を命令できるよう、決定しておくのです」

 こうした両氏の主張を、私がとことん問うた『脱属国論』(毎日新聞出版)を刊行した。説得力のある主張である。ぜひ読んでいただきたい。

※週刊朝日  2019年5月31日号


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