作家・室井佑月氏は、米国によるイランの司令官殺害と安倍晋三首相の動きについて論じる。



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 呆(あき)れた。心底、呆れた。

 1月4日、安倍首相は千葉県袖ケ浦市のゴルフ場で、妻・昭恵氏の弟・松崎勲氏らとのプレーの合間にメディアの取材を受け、記者団に、「おかげさまでゆっくりできました」と語ったらしい。米軍がイラン革命防衛隊の司令官を殺害し、すわ第3次世界大戦勃発かと、世界中がきりきりしている状態なのにさ。

 もちろん、ほかの国はすぐに声明を出したさ。3日にもう発表している。ちなみに、その日、この国のアベちゃんは奥さんと映画に出かけておった。

 4日の「NHK NEWS WEB」によれば、イラク「米の攻撃はイラクの主権に対する傲慢(ごうまん)な侵害」、中国「米に自制求める」、トルコ「深く憂慮」、ドイツとフランスは懸念表明。ロシアはアメリカを非難、国連は「湾岸で新たな戦争を起こすわけにはいかない」。

 そういえば別のところで英国の「これ以上の対立は誰の利益にもならない」というのも読んだな。

 この国のアベちゃんは、3日に昭恵夫人と映画、4日は冬休み4回目のゴルフ。

 朝日新聞デジタルによれば、「6日に三重県伊勢市の伊勢神宮に参拝し、年頭の記者会見に臨む予定」だというから、5日も休んだらしい。でもって、6日に初詣をし、プロンプターを使った作文原稿読みの新年の挨拶(あいさつ)か。この国の首相って、気楽な商売なんだなぁ。

 そうそう、記事にはこう書かれていた。「『今月、諸般の情勢が許せば中東を訪問する準備を進めたいと思っている』とだけ述べた。政府は昨年末に自衛隊の中東派遣を閣議決定し、首相は今月中旬にサウジアラビアなどへの訪問を調整中だが、具体的言及を避けた形だ」

 これを読んで、ひょっとしてアベちゃんは、ニュースを知らないのかもしれないとまで思ってしまった。中東へまたいくつもり、って旅行じゃないんだからさ。

 だってそうでしょ。米国とイランがもめたら、この国としてどうする、どうあるべきかってのがない。

 共産党の志位和夫委員長のほうがよっぽどこの国の首相ぽいわ。3日、自身のツイッターに、「トランプ米政権が、イランに対する軍事的挑発行動を行い、両国の緊張関係が激化するもとで、自衛隊の中東沖への派兵は、いっそう無謀で、危険きわまりないものとなった。いま安倍政権がなすべきは、派兵の決定を撤回し、トランプ大統領に対して軍事的挑発をやめイラン核合意への復帰を説く外交努力だ」とあげた。

 そうだよ、この国として、こういう声明があがるべきでしょ。

 政府は、昨年末に自衛隊の中東派遣を閣議決定した。なのになぜ、こんなにゆったりしてるんだ。

 国旗がかけられ、並べられた棺を見ることになってもなんとも思わないってか?

 彼らの支持者にも、あたしはおなじことをいいたい。

※週刊朝日  2020年1月24日号