作家・室井佑月氏は、国会の焦点が「桜を見る会」疑惑から新型肺炎問題に移る現状に皮肉を込める。



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 家の近くの薬局にマスクとアルコール消毒液を買いにいったら、それらはほとんど置かれてなかった。アルコール消毒液がかろうじて1本だけ残っていた。

 なぜマスクとアルコール消毒液が必要だと考えたかといえば、テレビで新型コロナウイルスについての報道を毎日見ているからで、ほかの人もそうなんだろう。

 首相官邸のホームページには「新型コロナウイルス感染症に備えて 〜一人ひとりができる対策を知っておこう〜」というのが載っていて、そこにはこう書かれている。(1)手洗い(2)普段の健康管理(3)適度な湿度を保つ、などだ。

 そして、国内で症状が現れた場合は、マスクを着用するなどし、あらかじめ医療機関に連絡の上、速やかに受診するように、とのこと。

 ま、その通りなんだろう。で、これらについては、国民の多くに知らせなきゃならないことであることも理解できる。だから、テレビでは毎日、毎日、コロナについて流しているんだろう。

 しかし、1、2回見逃してしまった人のためといっても、連日にわたり、朝から晩までずっとそればかりだ。

 武漢から帰国する人たちの飛行機の中継は、どんな意味があるのかわからん。テレビの端っこに「武漢から第3便帰国何人」とテロップ入れるだけでいいじゃん。

 原発事故のときは「国民がパニックになってはいけない」と報道規制があったが、今回はパニックになってもいいのかしら。そういや、北朝鮮がミサイルを放つXデーとやらも、相当、パニックを煽(あお)っていたわい。

 結局、どう報道されるかは忖度(そんたく)とやらで、すべて政府の都合なのかもしれない。そんな風にあたしは思えてならない。

 国会が開かれ、政府側の答弁は(桜についても、IRについても)聞くに堪えない酷(ひど)いものであるが、ほとんどそれについては流れない。

 自民党の世耕弘成・参院幹事長などは、デマまで流す始末だ。世耕氏は国会での野党質問についてツイッターで、「(略)始まって40分経過しましたが、(略)新型コロナウイルス感染症について質問をしない感覚に驚いています」と発信した。

 え? コロナについては早々に、衆議院厚生労働委員会の理事会を開いてほしいと、野党側から与党側に申し込んでいたんだけど。タレントのフィフィは、「(前略、国会で桜をやってて)今追及すべきは新型コロナウイルスへの危機管理じゃないのかな…こちらは国民の命を脅かす深刻な問題だからね、呑気なもんだ、と思ってしまった」とツイートした。それには3万5千件もの“いいね”がついたという。1月30日の日刊スポーツ電子版の見出しは「野党はコロナより桜追及(略)」だ。

 国民の命を脅かすコロナだけど、確実に、おかしいくらいに、コロナによって、コロナに助けられている人がいる。

※週刊朝日  2020年2月21日号