新型コロナウイルスのおかげで、桜を見る会の窮地を脱した安倍政権だが、今度は、コロナの終息時期と五輪の中止または延期という大きな不確定要因に命運が左右される状況に陥った。



 今夏の五輪実施判断のタイムリミットと言われる5月中のコロナ終息は困難というのが大方の専門家の見方だ。安倍総理が、16日のG7首脳テレビ会議後に発した「完全な形で実現」という言葉は、今夏実施断念の意味だと受け止められた。安倍総理の盟友トランプ米大統領も五輪延期に言及し、非常事態は7〜8月まで続くと述べている。

 五輪延期が事実上決まりだとすると、それによって何が起きるのかが次のテーマだ。こういう時は、今井尚哉総理秘書官兼補佐官ら、「チーム安倍」がフル稼働する。既定の政治カレンダーを基礎に、コロナや五輪がどうなるかをケース分けしてシミュレーションし、日々の安倍総理の言動を決めていくのだ。

 プランAは、日本のコロナが夏までに終息し、経済対策の効果もあって景気が急拡大するという非常に幸運なケースだ。この場合、前々回のコラムでも言及したとおり、今秋の衆議院解散総選挙という選択肢がある。7月の都知事選で小池百合子都知事を支持して大勝することも一つの条件だ。ただし、世界経済の落ち込みは激しく、日本経済の急拡大も難しいから、このシナリオの可能性は低い。

 次に、米テレビ放映権の関係で実施は夏に限られるため、丸1年延期のプランBと2年延期のプランCが検討される。実は、安倍政権にとって、プランBのほうがプランCよりはるかに良い選択肢だ。なぜなら、来年9月の自民党総裁選、10月21日の衆議院議員の任期満了の直前に五輪フィーバーで、安倍内閣支持率が上昇する可能性が高いからだ。その勢いを使えば、総裁4選、あるいは4選でなくても、後継総裁の指名などでキングメーカーとして院政を敷くことができる。場合によっては、オリパラ直後に解散総選挙。大勝した勢いで総裁4選もある。

 任期切れを控える議員は、総裁は選挙に強いことが最も大事だという意識になるので、選挙に弱そうな岸田文雄政調会長は不利で、むしろ、地方で人気の石破茂元幹事長のほうが有利だ。そうなれば、安倍総理としては、大嫌いな石破氏に勝てる候補として、自ら乗り出さざるを得ないとの判断になるかもしれない。

 一方、2年延期のプランCは最悪だ。来年10月まで有利な材料がなく、内閣支持率が上がらないまま総裁選なら、選挙に怯える議員が石破氏支持という展開になる。

 そこで延期1年が至上命令になるが、そこには難題がある。来夏の世界陸上・世界水泳選手権とバッティングするからだ。そこで思い出すのが、東京五輪誘致の際に、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長(当時)が、国際陸上競技連盟前会長関係者に賄賂を贈ったという疑惑だ。国際競技団体幹部に贈賄まがいの行為で1年延期を認めさせる。そんな疑念が頭に浮かぶ。

 誘致、そして延期にも賄賂なら、腐った東京五輪だが、開会にあたっての安倍総理の言葉には美辞麗句が並ぶだろう。しかも、コロナの混乱に乗じて、福島復興未達の事実から世界の目をそらすため、五輪のスローガンは、「福島復興五輪」から「コロナ克服五輪」にすり替えられる。そんなシミュレーションまでする官邸官僚たちの姿が目に浮かぶ。

※週刊朝日  2020年4月3日号