学校休校が長引く中、9月入学論が盛り上がっている。前からある話だが、文部科学省や自治体教育委員会などの反対で実現困難だった。



 せっかく自治体側がやりたいというのだから、今回は、ぜひそれを実現すべきだと私は考えている。

 そこで、今回のテーマだが、9月入学と密接に絡んだ問題について紹介したい。

 9月入学の最大のメリットは、9月入学が主流の欧米の学校と相互に留学しやすくなることだ。ただし、一つ留意点がある。それは、優秀な人材の海外流出が一気に加速する可能性である。

 背景には二つの要因がある。一つは優秀な若者は海外で働いたほうがはるかに稼げること。もう一つは日本の未来は暗いということだ。

 この見方には異論もあるだろう。しかし、海外生活経験のある富裕層などを中心に、これは半ば常識化している。

 週刊朝日(5月1日号)が掲載した2019年の海外大学合格高校ランキングでは、1位広尾学園74名を筆頭に6位までが50名超の海外大学合格者を出し、筑波大学附属駒場や灘などの一流校は、ハーバード、プリンストンなど米国の超一流校に合格者を出している。東大を蹴って米大学を選ぶ者も増加中だ。そこで紹介された「日本の大学では先行きは暗い」「海外のほうが将来が開ける」という保護者の声は日本の現状を的確に表している。

 昨年9月に私が対談した米投資家のジム・ロジャーズ氏の「私がもし10歳の日本人なら、直ちに日本を去るだろう」という言葉は現実になりつつあるのだ。

 海外で活躍するには、世界で通用する学歴が必要だ。「東大」でも世界の大学ランキングでは36位。アジアランキングでも、日本から上位20校に入れるのは、8位東大と11位京大だけで、20校中、中国6校、香港・韓国各5校、シンガポール2校という状況だ。

 つまり、日本の大学に行くより海外の大学か大学院を出るほうが良いということになる。

 日本を見切った何百人もの若者が毎年米大学に渡れば、企業の紐付き留学とは本気度が違うから、そのうちの一定割合が米社会で活躍し始めるのは確実だ。彼らが発信する情報は広く日本中に知れわたり、東大より海外の有名大という流れは明確になるだろう。

 それは日本産業界にも大きな影響を与える。経団連企業の幹部は、日本の学生の英語力が低く国際競争上大きな不利益を被っていると、文科省を批判してきた。

 しかし、もし、日本の優秀な学生が英語を話せるようになれば、誰も経団連企業などに就職しない。長時間労働、休みも取れず、安月給、パワハラ・セクハラ当たり前、組織への忠誠が強制される会社に入るのは、海外への道を英語力という壁で閉ざされていたからだ。

 今や、ネットでネイティブスピーカーから英語を学ぶ若者は急増している。文科省教育の外で英語力を高めた若者は日本を飛び出すことになるだろう。

 ただし、高額な留学費を一般家庭で工面するのは難しい。文科省の出鱈目な英語教育に加え、日本企業の賃金抑制と政府の円安政策が若者を日本につなぎとめるくびきとなる皮肉な状況。

 それでも、日本の若者には海外で活躍してほしい。そして、億万長者になって、将来日本が破たんして中国などに買いたたかれた時に、日本を買い戻す助っ人になってくれたらなどと思う。

 その時、日本が救うに値する国なのかどうかは、はなはだ心もとないが。


※週刊朝日  2020年5月22日号