安倍晋三首相が7月発売の月刊誌で「(次期首相の)有力な候補者の一人」と持ち上げた菅義偉官房長官が迷走している。

「令和」発表を機に有力候補として知名度を上げたものの、菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相の側近2人の辞任に加えて桜を見る会での場当たり的対応で失速。最近急接近している自民党の二階俊博幹事長が推進した観光支援策「Go To トラベル」の早期実施を後押しして政権内の評価を高めたとされるが、コロナ禍での強行に世論から猛反発を食らった。1日の新規感染者が全国で千人を超え、東京都医師会が臨時国会を開いて対応するように求めても、「与党とも相談する」などと明言を避けた。

 菅氏が抱えるもう一つの懸念案件が、IR計画だ。IR推進本部副本部長として旗振り役を務めてきたが、衆院議員の秋元司被告が収賄罪で起訴された。地元・横浜市が有力候補と想定した米カジノ大手のラスベガス・サンズはコロナ禍で撤退を表明した。

 菅氏は7月下旬の会見で「IRは我が国が観光先進国になるのに極めて重要な取り組み」と述べたが、見通しは暗い。

 海外のIR事業に詳しいベイシティベンチャーズの國領城児氏が言う。

「コロナ対策でカジノを閉鎖したため、米ラスベガスのIR企業の5月の売り上げは前年比99%減。マカオも95%以上の減。どこも既存施設の立て直しが急務で、日本市場は二の次という状況です」

 政治ジャーナリストの泉宏氏は、こう話す。

「(政府自民党内でも)今の状況でIRなど無理だとの声が圧倒的で、最低でも1年は延びると言われています。となると背負うのはポスト安倍政権ですが、逮捕者まで出した計画に誰が手を出すのか。政界全体が触れたがらない状態です」

 このまま菅氏が首相レースを勝ち抜けば推進に動くこともあるが、その可能性は低いと見る。

「もともと菅氏は安倍首相あっての存在。政権が代わって流れが切れれば、党内に担ぐ人はいないのではないか」

 一方、政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、IRが実現するカギは二階幹事長と小池百合子都知事にあると言う。

「小池氏はIRを検討中で、市場がケタ違いに大きい東京がコロナ対策費補填(ほてん)のためなどとして誘致を表明すれば、撤退した事業者が戻ってくる可能性もある。小池氏は菅氏と犬猿の仲ですが、二階氏との関係は良好。二階氏が幹事長に再任された上でIRを誘致する絵を描けば、あり得ない話ではありません」

(桐島瞬)

※週刊朝日  2020年8月14日‐21日合併号