作家の室井佑月氏が、ワクチン接種、アプリ「COCOA」などについて言及する。



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 2月19日付「朝日新聞デジタル」の「ワクチン接種で死亡したら4420万円支払い 厚労相」という記事によれば、「新型コロナウイルスのワクチン接種により、副反応などで死亡した場合、国の予防接種健康被害救済制度で一時金4420万円が支払われると田村憲久厚生労働相が19日、明らかにした。(中略)その他、葬祭料として20万9千円も給付される」という。

 ま、その制度は前からあったものだけど。今回、改めていっとかないと。コロナワクチン、副反応が怖いと打たない人が多くなれば、感染予防が成り立たなくなってしまう。

 といっても、そのワクチンをあたしたちみんなが接種できるのは、いつになるのかさっぱりわからない。

 3月下旬といわれていた高齢者の接種スタートは、4月にずれ込み、今は米ファイザーの欧州工場がワクチンを増産できるのが5月以降で、日本にワクチンがまわってくるのもそれ以降であるといわれている。

 菅首相は「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しの東京五輪」とか、「感染対策を徹底して安心、安全な大会の実現」として「2月下旬にも始まるワクチン接種によりしっかり対応することで、国民の雰囲気も変わる」などといってきた。

 なのに、国民へのワクチン接種が間に合わなくなると、「ワクチンを前提としなくても、安全安心な大会を開催できるよう準備を進めている」といいだした。「オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ」で乗り切ろうという。

 ちなみにこのアプリは、海外からのアスリートや関係者120万人の利用を想定し、73億円の予算をかけた事業だ。あたしたちにすすめたぜんぜん使えないアプリ「COCOA」にかけた予算が4億円。あたしたちは1億2600万人。どう考えてもおかしいだろう。

 このことを国会で野党議員に突っ込まれ「知らなかった」と菅首相は答えた。まぁねぇ、長男の接待問題もあがっているからそれどころじゃないのかも。つか、菅首相をはじめ、今の政府はまず自分らのやりたいことがあって、予算をつけ、そのための言い訳をあたしたちにしているだけだ。

 結局、ワクチンは東京五輪をやるために必要だったわけだし、なぜそこまで東京五輪をと考えると、自分らの選挙に生かしたいだけ。

 自分らの思惑で東京五輪やGo To キャンペーンを強行するわけだから、いっそのこと東京五輪開催やGo To 再開してからコロナにかかって亡くなった人には4420万円払うのでいいんじゃない? 無策でお亡くなりになった方にも。

 あたしたちにそのくらいのことを無理に進めていると思う。

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

※週刊朝日  2021年3月12日号