明暗分かれた神戸やG大阪、C大阪 サプライズ起こした昇格組【J1全18チーム中間査定その3】

明暗分かれた神戸やG大阪、C大阪 サプライズ起こした昇格組【J1全18チーム中間査定その3】

 早いもので、2019シーズンのJリーグも折り返し地点を通過した。前半戦では戦前の下馬評をいい意味で裏切ったチーム、逆に期待外れとなっているチーム、おおむね想定通りに勝ち星を重ねてきたチームもある。そこで今回は、Jリーグをつぶさに「うぉっち」している河治良幸氏がJ1全クラブを中間査定(良い方からA・B・C・D・Eの五段階)し、3日間にわけて紹介する。

*  *  *
セレッソ大阪 B

 ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の1シーズン目、しかも山口蛍や杉本健勇など複数の主力選手が移籍したことを考えれば、前半戦が終わった時点でACL出場が狙える順位、勝ち点差に付けていることは高評価できる。前体制からは基本戦術が大きく変わったが、清武弘嗣ら従来の主力に奥埜博亮のような戦術理解に優れた新戦力、生え抜きの若手である瀬古歩夢などから攻守のバランスが取れたチームを構成した。ベースを築きながら、対戦相手に応じて立ち位置を変化させるなど、チーム作りと結果が噛み合っている。エースとして期待された都倉賢の長期離脱は痛かったが、第10節で初ゴールをあげたブルーノ・メンデスがフィットしてきたことも中盤戦の推進力になっている。若い選手が多いチームの割に90分間のゲームコントロールも見事で、逆転負けは第4節の浦和戦のみ。チーム自体は完成途上にあり、ここからさらに成長も見込める。移籍が囁かれた柿谷曜一朗も残留を決断し、後半戦での奮起が期待される。

ガンバ大阪 D

 ボールを握り、前から行く戦い方が噛み合った時には上位のチームに遜色ないパフォーマンスを発揮するが、崩れると途端に組織が不安定になり、攻守ともに大味なサッカーに変貌する。試合の蓋を開けて見ないとどちらに転ぶか分からないチームに対戦相手も戸惑っているかもしれないが、悪い目が出る試合の方が多く、第19節を終えた時点で降格圏から勝ち点6差という位置どりにも表れている。ただ、その中でもU−23を主戦場としていた若手が、U−23監督を兼任する森下仁志コーチのもとで台頭し、新たな主力となりつつあることはポジティブなトピックスだ。うまく波に乗れれば残留争いどころか上位進出も十分に可能だが、夏の放出選手が多く、後半戦に向けて不安の声も強まっている。宇佐美貴史は帰ってきたが、新たな補強があるのか気になるところだ。

ヴィッセル神戸 E

 ダビド・ビジャ、山口蛍、西大伍など国内外のビッグネームを次々と獲得して注目されたが、序盤戦に大量失点の試合が続くと、中位につけていたにもかかわらずフアン・マヌエル・リージョが契約解除で退任した。その後、吉田孝行前監督が引き継いだが敗戦が続き、第16節からドイツ人のトルステン・フィンク監督が率いているが、ボールポゼッションを重視するコンセプトは継承しながら、対戦相手を分析して対策を立てるプランニングを組み込み、機を見たカウンターも繰り出すなど、柔軟な戦い方にシフトしている。空中戦に強いウェリントンと“バルサ化”を推し進めるキーマンとも目されたビジャが前線に並び立つ布陣は象徴的だ。人事のバタバタもあり、投資に結果が見合っているとは言い難いが、後半戦で前半戦より勝ち点を伸ばしていけるポテンシャルは十分ある。

サンフレッチェ広島 C

 開幕7試合で5勝2分けとスタートダッシュに成功したが、第8節のFC東京戦に0−1で敗れると、全て1点差で5連敗を喫した。その最中、A C Lでは下馬評を覆す快進撃で、ラウンド16ではアジア王者の鹿島にアウェーゴールの差で惜しくも敗れたものの、見事な戦いぶりだった。城福浩監督は早い段階から主力を固定せず、競争を作り出すことで選手層は厚くなっている。誰が出てもコンパクトに連動してボールを奪い、素早く縦に仕掛けていくスタイルにおいて、パフォーマンスを落とさない戦いはできている。昨シーズンは夏場を転機に大失速を経験したが、今回はそうした事態には陥らないはずだ。ただ、一人一人が決定的な違いを生み出すことはできていない。後半戦で浮上していくには城福監督の采配もカギだが、若い選手たちの伸びしろにかかる部分も大きい。

大分トリニータ A

 19試合終わった時点で9勝5分け5敗の勝ち点32で5位。前半戦で最も驚きを提供したチームであることは間違いないだろう。片野坂知宏監督はJ2での戦いを支えたメンバーに加え、小塚和季やオナイウ阿道などJ2の他クラブで活躍していたタレントを組み込んで、3−4−2−1をベースとした幅広いポゼッションにロングカウンターを織り交ぜるスタイルで対戦相手を苦しめた。エース藤本憲明の活躍もチームを勢いづけた。第13節の川崎戦と第14節のFC東京戦で初めて連敗したが、総合力で上回る相手に挑んで敗れても下を向くことなく、その後も粘り強く勝ち点を積み重ねている。当初の目標である残留を早い段階で果たし、残りの試合で1ポイントでも多く勝ち点を増やしていければ今後の成長に向けて大きな足がかりになる。ここまで躍進してきて上位フィニッシュを狙わない監督、選手などいないだろう。ACL圏内まで割り込んでいくには前半戦で敗れた川崎やFC東京との直接対決にも勝っていくぐらいのチーム力が必要で、7月27日の等々力での川崎戦は試金石になるかもしれない。

サガン鳥栖 E

 ルイス・カレーラス前監督の更迭は仕方ない。長期的なプランを前提にチームを任せたはずだが、掲げていた理想が早々に崩され、10試合で1得点。途中、アクションからリアクションに戦い方を転換しても結果がついてこなかった。金明輝監督が就任して初陣となるガンバ大阪戦で、いきなり3得点を奪い、そこから3連勝を飾ったが、セレッソ大阪にホームで敗れると今度は3連敗を喫した。ボールを奪う位置、攻撃にかける人数など、空間的なバランスは良くなっているが、課題はゲームコントロールだ。リズムが悪くなると粘り強く立て直せない傾向が強く、0−2で敗れた第19節の広島戦も、先制点をアシストしたパトリックのオフサイドが見逃される不運はあったものの、そこから巻き返せずにズルズル行ってしまう勝負弱さが露呈された結果ではあった。ただ、そこは序盤戦ほどではないものの、得点力不足が続いていることも要因にある。攻撃を引っ張ってきたフェルナンド・トーレスが8月23日の神戸戦をもって現役引退するが、ここまでなかなか結果を出せていないFW陣が奮起していかないと残留までは届かないだろう。(文・河治良幸)

○河治良幸(かわじ・よしゆき)/サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。




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