“過大評価”の選手も? 甲子園の活躍がスカウト陣に与える「大きな影響」

“過大評価”の選手も? 甲子園の活躍がスカウト陣に与える「大きな影響」

 夏の甲子園、U−18W杯も終わり、今年の高校3年生年代が出場する公式戦は全て終了となった(9月28日から行われる国体は公開競技扱い)。プロ志望届を提出した選手の公開もスタートし、いよいよドラフト会議も目前という時期である。今年の高校生では佐々木朗希(大船渡)と奥川恭伸(星稜)が双璧と言われているが、公式戦の実績という意味では非常に対照的だ。



 佐々木は甲子園出場はおろか東北大会の出場経験もないが、奥川は2年春から4季連続で甲子園出場を果たしている。ドラフトの評価に甲子園出場の有無とそこでの活躍はあまり関係ないと言われているが、果たして本当にそうだろうか。まずは過去5年のドラフト1位と2位で指名された高校卒の選手について調べてみると下記のような結果になった。

【甲子園出場経験有り:32人】(★が3年夏出場 ※が3年春出場)

岡本和真(智弁学園→巨人1位)★※
松本裕樹(盛岡大付→ソフトバンク1位)★
高橋光成(前橋育英→西武1位)
安楽智大(済美→楽天1位)
小笠原慎之介(東海大相模→中日1位)★
高橋純平(県岐阜商→ソフトバンク1位)※
平沢大河(仙台育英→ロッテ1位)★※
オコエ瑠偉(関東一→楽天1位)★
寺島成輝(履正社→ヤクルト1位)★
堀瑞輝(広島新庄→日本ハム1位)★
今井達也(作新学院→西武1位)★
藤平尚真(横浜→楽天1位)★
中村奨成(広陵→広島1位)★
村上宗隆(九州学院→ヤクルト1位)
吉住晴斗(鶴岡東→ソフトバンク1位)
清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム1位)※
安田尚憲(履正社→ロッテ1位)※
小園海斗(報徳学園→広島1位)★
根尾昂(大阪桐蔭→中日1位)★※
吉田輝星(金足農→日本ハム1位)★
太田椋(天理→オリックス1位)
藤原恭大(大阪桐蔭→ロッテ1位)★※
栗原陵矢(春江工→ソフトバンク2位)
清水優心(九州国際大付→日本ハム2位)★
広岡大志(智弁学園→ヤクルト2位)
高橋昂也(花咲徳栄→広島2位)★※
山口翔(熊本工→広島2位)※
西川愛也(花咲徳栄→西武2位)★
増田陸(明秀日立→巨人2位)※
小幡竜平(延岡学園→阪神2位)※
渡辺勇太朗(浦和学院→西武2位)★
野村佑希(花咲徳栄→日本ハム2位)★

【甲子園出場無し:5人】

宗佑磨(横浜隼人→オリックス2位)
小野郁(西日本短大付→楽天2位)
小沢怜史(日大三島→ソフトバンク2位)
古谷優人(江陵→ソフトバンク2位)
石川翔(青藍泰斗→中日2位)

 甲子園出場経験のある選手が圧倒的に多い結果となった。甲子園出場経験がない高校卒でのドラフト1位となると、過去10年間では中村勝(2009年・春日部共栄→日本ハム1位)、高橋周平(2011年・東海大甲府→中日1位)、武田翔太(2011年・宮崎日大→ソフトバンク1位)、鈴木翔太(2013年・聖隷クリストファー→中日1位)の4人がいるが、中村と鈴木はいわゆる外れ1位である。

 甲子園出場がない場合、今年の佐々木のように間違いなくその年のナンバーワン評価ではないと1位では指名されないというのが現実と言えるだろう。

 もう一つ注目してもらいたいのが★と※で示した高校3年時での甲子園出場歴である。1位で指名された22人の中で高校3年時に甲子園出場を逃したのは高橋光成、安楽、村上、吉住、太田の5人であり、そのうち最初の入札で指名されたのは高橋光成と安楽の2人だけという結果となったのだ。これを見ても、最終学年での甲子園出場がドラフト上位指名に繋がっていることがよく分かるだろう。

 ではなぜ甲子園出場が高評価に繋がるのだろうか。最も大きいのが各球団のスカウトが勢揃いするという点である。いわゆるその地域の担当スカウトの間では地方大会までで選手の評価はほとんど決まっていると言われるが、他の担当スカウトや編成トップが甲子園でその選手を始めて見るというケースも決して少なくない。そこで大きな活躍を見せれば、多くのスカウトに強い印象を残すことは間違いないだろう。

 また、3万人、4万人を超える大観衆の注目のなかで実力を発揮できるかどうかという点も評価を左右することも事実である。

 しかしその一方で、あるスカウトの話ではこの甲子園での揃っての視察が弊害になっているという声も聞かれる。普段から何度も足を運んでその選手について長所も短所も把握している担当スカウトの意見よりも、甲子園でのプレーだけを見たフロント、編成トップの意向が強く指名に反映されることもあるというのだ。

 近年では平沢大河、オコエ瑠偉、中村奨成などが3年夏の甲子園で大活躍を見せて評価を上げた選手の例と言える。

 中村などは地方大会を見る限りでは外れ1位か2位くらいという印象だった。もし甲子園に出場していなければ、地元の広島も1位指名を回避していた可能性もある。その一方で今年大ブレイクした村上などは外れ1位だったが、3年夏に甲子園に出場して活躍を見せていれば中村と評価が入れ替わったことも十分に考えられるだろう。

 先述したように甲子園という大舞台でも実力を発揮できるというのはプロで活躍するうえでも重要な要素ではある。しかしその活躍が、結果としてプロ側の判断を狂わせることも往々にしてあるのではないだろうか。そのような視点で今年のドラフト会議を見てみると、更に楽しさが増すことだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。


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