日本女子プロレスラー、本場アメリカのWWEで大人気なワケ

日本女子プロレスラー、本場アメリカのWWEで大人気なワケ

 女子プロレスがすごい。世界最大のプロレス団体WWEは昨年10月28日、女子だけのペイパービュー大会「エボリューション」を開催。そして今年4月8日、世界最大のプロレスショー『レッスルマニア35』(ニュージャージー州メットライフ・スタジアム)では、女子が初めてメインイベントのリングに立った(ロウ女子&スマックダウン女子王座戦)。この日は実に8万人以上のファンが会場に訪れ、会場は熱狂につつまれた。WWE側の女子プロレスへ対する本気度の高さがわかるだろう。その中で旬の扱いを受け、大いなる期待をされているのが、日本人女子レスラーたちだ。

 現在、WWE所属で活躍するのがアスカとカイリ・セイン。日本マットで活動していた2人は渡米後、アスカはWWEデビューから267連勝の大記録を樹立。カイリ・セインは同団体のセカンドブランドNXT女子王者を狙う位置にいる。2人は『レッスルマニア35』に揃って出場も果たし、今やWWE女子の顔とも言える。また日本時代から『天才』と呼ばれた紫雷イオも加入、現在はヒールとしてキャラを確立しつつある。

「WWEが本気で女子プロレスを売り出して、ビジネスにしようとしている。ここまでやるとは正直、想像していなかった」

 語ってくれたのは、アメリカマットで鮮烈な活躍をしたTAKAみちのく(TAKA)。TAKAは、日本マットではみちのくプロレスや新日本プロレスで活躍。97年からWWE(当時WWF)へ所属し、同年WWFライトヘビー級王座奪取、98年『レッスルマニアXIV』には日本人初出場を果たす。その後、00年プエルトリコで『KAIENTAI DOJO』を設立、02年WWE退団後に現地撤退し、国内・千葉へ拠点を移転した。現在は同道場を抜け、新団体『JUST TAP OUT』を営む。生涯現役選手として今も数々の経験を積み、プロデューサーとして多くの選手を育てている。国内外のプロレス事情に精通しているTAKAに聞いた。

「昔から女子が出てくると会場は盛り上がる、でも、それはプロレスとしてではなく、ショーというか……。露出度高めの、スタイルの良い女性がマネージャー的立場で登場、試合に介入する、その流れで試合をやったこともあったけど、あくまで余興のような位置付けだった。団体会長のビンス・マクマホンも本気ではなかったと思う。彼はあくまでヘビー級重視で、軽いクラスを主要なラインには組み込まなかった。軽量のスターだったレイ・ミステリオJr.も重い選手と戦って勝ったりしたほど」

 WWEをプロレスのみでなく、世界最高のビジネス団体にまで育てたマクマホン氏(WWE代表取締役会長兼最高経営責任者)。当時は女子どころか、軽量級レスラーもあまり重視していなかったという。

「良いことではないけど、女子はルックス重視という部分もあった。でも男子のレスラーからしっかり指導を受けるようになって、技術レベルが格段に上がった。もともと女子が出ると盛り上がるから、そこにクオリティが追いつけば商品として大きい。そういう部分での着眼点はさすがだと思う」

 高レベルの男子レスラーから常に指導を受けられる。また団体所有トレーニングセンターでの徹底した下積み。実力とルックス、まさに『才色兼備』のプロレスで、人気が出るのは必然の成り行きだった。

「日本人のアドバンテージは映画などでもわかる通り、西洋人受けするルックス、そしてプロレス力の高さ。日本では道場などで練習をしっかりおこないプロレスのベース、基礎の部分ができている。これは短期間に習得できるものではない。加えて大事なのはやはり英語。試合後にショーを締めるのも、途中で繋ぐのでもマイクパフォーマンスは重要な要素で技術の1つ。試合だけできてもダメ。映像など見る限り、今、WWEでやっている日本人選手はそのあたりもしっかりやっている」

 WWEの強みは選手育成の巧みさ、そして選手自身の志の高さだという。

「ニューヨーク郊外にあるトレーニングセンターで基礎からマイクまですべて教えられる。でもそこでの練習は実戦というか、実際に身体を動かすこと。それ以前の身体作りはいわば自己責任。少しでも見た目が悪かったり動けなかったりすると、クビの世界。選手個々が理解しているから、ウエイトなどは各自が欠かさない。そういう拠点がイギリスにもできた。今度は日本にもできるという話がある」

 さまざまな方法を駆使し、世界中から素材を集めて育成する。世界最大のプロレス団体ができあがるはずだ。

「以前はWWEの日本大会があると、トライアウトが行われた。参加資格は20代前半、身体が大きく、ルックスが良いこと……。仮にプロレス経験者じゃなくても、こっちで色付けはなんとでもできると言う。それは育成や売り出し方に大きな自信がないとできないこと。だからWWEが日本に拠点を作ったらどこの団体も勝てない。同じようなことを女子でもやろうとし始めている」

 TAKA自身は選手を育てるプロデューサーの立場として、今後はどう考えているのか。

「本物のレスラーを作りたい、という気持ちはブレない。大技に頼ってそれを乱発するのではなく、プロレスラーの凄みなどがしっかり伝わる本物。本物の選手は自団体だけでなく、他団体、そして海外に行っても十分にやれると思う。そういう選手が揃う団体になれば、お客さんも集まってビジネスもうまくいく。これからは女子の需要も高まっていくはず」

 野球やサッカーでも行われている、「選手を育てて売る」団体になる可能性もあるのだろうか。

「かつてWWEが育てた選手をライバル団体WCWが資金力で引き抜きまくった。でも最終的にはWWEが勝ち残って、逆にWCWを買収した。自前で選手を育てることのできる団体は強いし、それが一番大事。その上で選手自身が他団体や海外で経験を積むことはプラスしかないし、レスラーとしてのハクもつく。だから仮に海外へ挑戦したいという選手が現れたら、僕はどんどん行かせると思う」

 かつて男子団体に混じり、全日本女子プロレスが人気を得て、WWEへ参戦した選手も存在した。月日は流れ、現在の日本マット界は新日本プロレスの一人勝ち状態。女子プロレスは、世間にほとんど刺さっていない現状だ。しかし、そこへ海外からの新たな風が吹き始めた。

 男女を問わず、「戦いを感じられ、技術が高い日本的なプロレス」が求められる時代になった。その流れの中、元新日本プロレス・中邑真輔などにひけを取らぬほど、日本人女子レスラーの需要も急上昇している。

 今後、WWEをはじめ、海外へどんどん挑戦するレスラーも出てくるはず。彼ら、彼女らの活躍が今から楽しみである。そしてTAKAが『JUST TAP OUT』でどんなレスラーを育てるのか。どういうプロレスを見せてくれるか。ファイトスタイル同様、百戦錬磨、経験豊富な手腕に大きな期待が持てる。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。







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