こと打者に関して言えば、阪神はなかなか助っ人で“当たり”を引けないという歴史がある。



 それどころか、とんでもないハズレを引くこともある。最も有名なのはメジャーでは実績抜群だったマイク・グリーンウェル。「神のお告げがあったから」という誰もがビックリの言い訳で、来日シーズンの開幕早々に引退してしまうという口あんぐりの助っ人だった。

 無論、時には大当たりも引いていて、かつては三冠王を2度獲得したランディ・バース、近年では首位打者1回、最多安打3回のマット・マートンという優良助っ人もいた。しかし阪神は、日本ですでに活躍していた実績ある助っ人ではなく、自前で当たりを引く確率は残念ながらかなり低い。これまでいったい何人の“バース2世”が消えていったことか……。

 なぜ、阪神は優良助っ人打者を獲得することがなかなかできないのか。昨年も、7月に加入したヤンハービス・ソラーテが9月には早々にいなくなってしまった。「やる気が出ない」という驚きの理由で職場放棄し、自宅に戻ってしまうという考えられない行動に出るひどい有様だった。

「ソラーテは当初の話と異なるポジションを守らされた、という気の毒な事情もあった。しかし入団早々、これで動けるのか、というほど太めの体が気になった。夏場にコンディション調整もあって二軍に落とされたが、本人の自覚も低かった。『フロントは何を調査して獲得したのか』という声が上がっていたのも事実」

 阪神担当記者が語るように、ソラーテはシーズン途中入団の即戦力として期待されていたが、いざ蓋を開けてみると、全く使いものにならなかった。球団編成が責任を指摘されても仕方のないレベルのハズレだった。

 一般的に、各球団が外国人を獲得する際には、大きく分けて2つのルートがある。1つはフロントが主導権を持って行う方法。もう1つは数多くいる代理人主導で進めていく形だ。

 フロント主導の場合は、編成、現場の意向などを練り合わせて該当する選手を探し出し、時間をかけて調査する。担当スカウトも球団の人間が担当する場合がほとんど。そのため、駐米スカウトとして球団職員の契約を結ぶこともある。時間と予算はかかるが、球団の意向に沿った外国人を獲得できる可能性が高い。

 もっとも、メリットばかりというわけでもない。事情に詳しい某球団関係者は語る。

「編成主導での外国人獲得は時間がかかる場合が多い。そのため組織が変わって調査などの動きが止まったりして、うまくいかないこともある。特に親会社関連からの出向などで編成担当者が球団に来た場合はそれが多い。昨年の巨人などはその最たる例です」

 巨人は海外スカウト活動の責任者として、編成本部次長兼国際部長に親会社のグループ企業・読売テレビ出身の春川正明氏を登用。選手の露出などには抜群の実力を発揮したようだが、補強に関しては経験不足が否めなかった。1年で退任となったのも納得である。

 一方、代理人主導の場合は、彼らの売り込んできた選手から選び、数試合の現地視察を経て契約となる場合が多い。球団はほとんど何もせずに外国人を探すことができる。しかし、実際にじっくりと見て獲得したわけではないからハズレを引くことも多く、いわゆる“悪徳代理人”にだまされるケースも少なくない。

「これまで阪神は独自ルートをほとんど持っていなかった。だから戦力的に困った時に代理人に頼らざるを得なかったため、『欠陥品』を掴まされることが多かった。これからはフロント主導で、しっかりと選手の掘り起こしをやった方がいい。日本人の若手で良い選手が出てきているので、その間に外国人補強にも強くなれば、黄金期到来も夢ではない」。前出の球界関係者は阪神についてこう話す。

 その阪神とは対照的に、よく“当たり”を引くというイメージが強い中日には、森繁和氏という特別なルートがあった。中日時代の森氏をよく知るスポーツライターは語る。

「中日を退団した森氏はドミニカ共和国など『モリシゲ・ルート』が有名。森氏が独自で作り上げた中南米ルートだが、ビシエドなど多くの優良助っ人を発掘している。これは森氏本人の目利きや人徳など、さまざまなものがあったから可能になった。また相当な時間もかかっている。すぐに同様のルートを作ろうと思ってできるものではない。だからこそ、今年のオフは森氏と契約したい球団はかなりあったと聞く」

 リーグ優勝を飾る上で、強力な助っ人の存在は必要不可欠だ。たまたま当たりを引くようなラッキーに頼るのではなく、長期的スパンに基づいた土台作りをしていかなければ、阪神の“くじ運”はいつまでたっても変わらないだろう。