明日2月14日はバレンタインデー。この日は各地でキャンプ中のプロ野球選手たちにも、女性ファンからチョコレートが届けられる。



「選手」と書いたが、すでに現役を引退してコーチになっているのに関わらず、現役選手をしのぐ女性人気を誇っているのが、中日の浅尾拓也2軍投手コーチだ。

 昨年4月、名古屋テレビの朝の情報番組『ドデスカ!』で発表されたドラ女子100人による中日イケメンランキングでは、根尾昂、松井雅人、高橋周平ら現役組を抑え、19票で堂々のトップに輝いた。

 現役時代は“浅尾きゅん”の愛称で親しまれた“球界一のイケメン”だが、まだそれほど有名ではなかったルーキー時代の2007年の沖縄キャンプでも、甘いマスクが女性ファンのハートをつかみ、約40個のチョコを手渡されている。

「疲れたときによくつまんでます。あと体重増やしている途中なので、貰ったのは部屋で食べています」(同年2月15日付中日スポーツ)と頂き物を肉体改造に活用した浅尾は、“チョコ効果”で2年目にリリーフとして44試合に登板。北京五輪に出場した岩瀬仁紀に代わって守護神を務めるなど、中継ぎエースに成長した。

 すると、翌09年のバレンタインデーは、宿舎に届いた分こそ、25個の荒木雅博がトップで、浅尾は岩瀬と同じ15個の3位タイ(2位は井端弘和の20個)だったが、球場でファンから手渡された分が約80個もあり、前年から倍増。翌10年は、前年12月に結婚した影響から宿舎に送られてきたチョコの数も減少し、「もうこの話はいいですよ」と報道陣を制しながらも、グラウンドでは次々に手渡しのチョコを受け取っていた。

 その後もイケメンナンバーワンの座は揺るがず、16年に「Woman Excite」が発表した「チョコをあげたいスポーツ選手ランキング」でも、野球選手ではトップの8位(1位はフィギュアの羽生結弦、野球選手の次点は10位のイチロー)に入っている。

 それでは、過去に最も多くチョコレートを貰った選手は誰か?比較的記憶に新しいのが99年、西武ルーキー時代の松坂大輔だ。キャンプ地の高知に届いたその数は、なんと1000個。所沢の球団事務所に届いた分と合わせて約1200個になった。

 山積みになった段ボール箱を前にして、さすがの“平成の怪物”も「チョコは溶けてしまいますし、一人じゃとても食べきれない」と困惑の表情。球団と相談し、「全国のファンから頂いて大変ありがたいんですが、無駄にもできませんし」と高知市内4カ所の児童養護施設に約500個をプレゼントした。

 西武は森祇晶監督時代にも渡辺久信、清原和博、工藤公康の人気トリオがチョコの数を競い合い、87年にチームトップの1214個を貰った渡辺は「最高で2000個貰った」と回想している。

 89年にはロッテのルーキー・前田幸長が1500個貰い、毎年1000個以上をキープも、結婚直後の92年に114個と10分の1に激減。トップの座も180個の愛甲猛に奪われた。「愛甲さんも結婚してるわけでしょ。だから、結婚が原因ってわけじゃないと思うんですよ」と首を捻った前田だが、日本ハムのトレンディーエース・西崎幸広も、結婚して子どもが生まれたあともトラック数台分のチョコが届き、娘の莉麻(現タレント)が「父に届いたチョコを食べていた」と明かしている。結婚したから必ずしも数が減るとは限らないところも面白い。

 ちなみに西崎の独身時代の88年には、ファンからチョコを貰って喜んだある選手が、裏側に「西崎さんに渡してください」と書いてあったことから、ガッカリしたという悲話も伝わっている。また、80年代初めの広島では、1番人気の高橋慶彦に対抗して、自分でお金を払って女の子にチョコを買いに行かせた選手もいたという。

「せっかくの機会を見過ごす手はない」と商戦に便乗したのが、菓子メーカーが親会社のロッテ。84年から「バレンタインキャンペーン・愛の直送便」と銘打ち、自社製品のチョコをお目当ての選手に贈る企画をスタートさせたところ、87年、落合博満との大型トレードで移籍してきた牛島和彦に1123個が届き、前年まで3年連続トップだった山本功児を余裕で抜いてトップに。「中日時代は最高で200個だった」という牛島は「1日3個食べても1年かかる。みんな食べたいけど、そりゃ無理ですわ」とうれしい悲鳴を上げた。

 17年からは「あなたがチョコを渡したい選手」投票を実施しており、昨年まで成田翔が3年連続1位に輝いている。

 チョコを贈られるのは、選手や監督、コーチばかりとは限らない。11年のヤクルトは、1位・青木宣親(250個)、2位・由規(180個)に次いで、3位に球団マスコットのつば九郎(98個)がランクイン。その後、数は減ったものの、17年にも山田哲人(350個)、広岡大志(36個)に次ぐ3位(28個)に食い込むなど、女性層から根強く支持されている。

 そして、贈る側も、必ずしも女性とは限らない。中日時代の福留孝介は07年にチームトップの70個を貰ったモテ男だが、入団1年目の99年は、同じ大物ルーキーながら、1200個の松坂と別の意味で注目された。バレンタインデー当日、選手宿舎前で外出するのを待っていた60歳ぐらいの男性からチョコをプレゼントされ、目を白黒。「こんな物を頂いても……」と複雑な表情だった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。