3月8日(現地時間)に閉幕した2020年世界ジュニアフィギュアスケート選手権で準優勝した鍵山優真選手。元オリンピック日本代表フィギュアスケーターの鍵山正和コーチを父に持つ期待の新星の武器は、親譲りの“猫足着氷”だという。AERA 2020年3月23日号の記事を紹介する。



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 ほろ苦い銀メダル──。それが世界ジュニア選手権を終えた鍵山優真(16)の心に刻まれた。トップ選手への登竜門と言われ、羽生結弦(25)や高橋大輔(34)も優勝を果たしてきた重要な一戦。今季は、全日本選手権3位、ユース五輪優勝、四大陸選手権3位と絶好調だった鍵山は、当然、ジュニア世界王者を狙っていた。

 ショートは圧巻だった。飛距離のあるトリプルアクセルをなめらかに着氷し、キレ味のいいステップも光る。ジュニアとは思えない熟練された演技で首位発進を決めた。

 しかしフリーは、得意の4回転トーループで転倒する。

「今季を通して一番自信を持っていたジャンプで転んでしまい、少し焦ってしまいました」

 後半のトリプルアクセルもタイミングが合わずに1回転半になると、フリーは5位。総合231.75点で銀メダルとなった。

 ミスの原因の一つは、ショートの首位発進にあった。12月以降の試合では、ショートはミスがあるか、パーフェクトでも首位発進ではなかった。ところが今回は金メダルが目前と感じたことから「欲が出て、思わぬ緊張感がありました」という。

 一方で、二つのミスがあっても銀メダルとなったのは、一つ一つのジャンプの美しさがあってこそ。鍵山の持ち味は“猫足着氷”と呼ばれる、足首、膝、股関節の柔らかさをいかしたジャンプのソフトランディングだ。どんな体勢からでも、フワッと衝撃を拡散させるように着氷し、そのままスピードを殺さずに流れる。実は、この猫足着氷は、2度の五輪に出場した父の正和氏から譲り受けたものだ。

「お父さんにそっくりで膝が柔らかいね、と言われます。特別なトレーニングをしたわけではないので遺伝なのかな。そういう意味では父に感謝ですね」

 鍵山は5歳のとき、スケートの指導者である父を見てスケートを始めた。

「親から勧められて始めたのではなく、スケート場に遊びに行っているうちに楽しくなったんです。当時は父のような選手になろうと思ったのではなくて、とにかく楽しかった」

 そんな鍵山に、トップアスリートとしての意欲を芽生えさせたのは、同年代のライバルたち。なかでも同学年の佐藤駿(16)とは、ジュニアに上がってから切磋琢磨する仲になった。

「駿君はとにかくジャンプがすごくて、自分とは実力が違うと思いました。最初は全然勝てなくて悔しかったです」

 それまでの鍵山は踊ることが大好きで、得意な技はスピン。しかしジュニアで4回転を跳ぶ佐藤らを見て、目標が変わった。

「年下や同学年の子が4回転を跳ぶなら、自分も負けていられないと思うようになりました」

 4回転トーループの練習を始めると、「思ったよりすぐに降りられるようになりました」。

それまで父のもとで基礎練習を徹底していたことが功を奏し、一気に得意技になった。

 ジュニアはショートでは4回転を入れられないことから、鍵山の勝負はフリーで4回転2本を入れる“挽回作戦”。1月のユース五輪はその作戦で、ショート3位から優勝をもぎとった。

 一方、世界ジュニア選手権は、首位発進からの銀メダル。

「この悔しさを一生忘れない」

 と誓った。来季からはシニア。

「夢は、五輪でメダル。その姿を父に見せたいです」

(ライター・野口美恵)

※AERA 2020年3月23日号