静岡県と言えば、昔から「サッカー王国」というイメージが強いが、実は野球も熱い。静岡県の高校野球はかなりハイレベルな戦いが繰り広げられる。なぜなのか。それは公立の古豪と私立の新鋭がバランスよく覇権を争っているからだ。

 たとえば、埼玉県と比べてみても、埼玉はかつての公立の古豪と言われた上尾や熊谷商、所沢商などがすっかり鳴りを潜め、代わって浦和学院、花咲徳栄、春日部共栄などの私立が上位を争うようになってきた。

 その点で、静岡は公立と私立のバランスがいい。静岡、浜松商、静岡商などの公立校と、日大三島、東海大静岡翔洋、浜松修学舎、常葉橘、常葉学園菊川などの私立校が競い合っている。公立の雄は静岡。そして私立は常葉学園菊川だろう。

 また、静岡県はこれまでプロ野球に名選手を多く輩出してきた。まず思い出されるのは、静岡高校から近鉄に入団し、プロ通算139セーブをマークした赤堀元之だろう。

 1989年から2004年まで近鉄一筋で、1992年から3年連続で最多セーブを獲得。1992年は救援投手でありながら、規定投球回数にも到達し、最優秀防御率のタイトルを獲得した。これは実に珍しいことだ。1995年は調子を落としたが、それでも翌年から2年連続で20セーブ以上を記録した。静岡が生んだ、最高のストッパーだろう。

 出身は東京だが静岡で育ち、静岡商からドラフト外で巨人に入団した新浦壽夫も、プロ野球を沸かせた一人。静岡商を中退して巨人に入団したのが、1968年。当時の川上哲治監督から、体の線が細かったことや左肩を故障していたなどの理由で、数年はランニングだけで過ごし、ボールを握ることを許されなかった。だが、1976年、長嶋茂雄監督の2年目の頃から大器の片鱗を発揮。先発に、抑えにフル回転の活躍をしたのだ。

 打者に目を向けると、静岡商から亜大を経て近鉄に入団し、4度の盗塁王に輝き、通算415盗塁をマークした大石大二郎が筆頭か。415盗塁は歴代7位の成績で、静岡が生んだ最高の韋駄天だろう。

 もう一人打者を挙げると、清水東高校から慶大を経て、大洋(現DeNA)に入団した山下大輔氏。名遊撃手として8年連続ダイヤモンドグラブ賞に輝き、のちに監督にもなった。

 現役選手では、オリックスの増井浩俊が静岡高校出身。駒大、東芝、日本ハムを経て、2018年からオリックスでプレーしている。ドラフト5位と下位指名だったが、すぐに頭角を現し、2012年には45ホールドで最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した。2014年からはクローザーを務め、同年は23セーブ、翌年は39セーブ、18年にも35セーブをマーク。また、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表にも選出された。

 現在では絶滅危惧種の“サブマリン”牧田和久も静岡県焼津市出身の現役プロ野球選手だ。高校まで静岡で過ごし、平成国際大、日本通運を経て、2010年のドラフト2位で西武に入団。1年目から開幕一軍入りし、22セーブを挙げる活躍を見せた。翌年からは先発に定着してローテを担った後、2016年には中継ぎに転向して安定したピッチングを披露するなど、幅広い働きでチームを助けた。

 2018年に夢だったメジャー挑戦を果たし、パドレスに入団するも米国の地では思ったように活躍できず。昨年末に楽天と契約し、日本球界復帰となった。アンダースローから放たれる浮き上がるようなストレートと、変化球を織り交ぜる多彩な投球術はまだまだ通用するはずだ。

 このように、静岡県からは数多くのプロ野球選手が生まれてきた。「王国」の称号はサッカーだけでなく、野球で使用されても十分に説得力があるのではないだろうか。