19日にスタートした今年のプロ野球。開幕ダッシュに成功した巨人と、大失速となった阪神の違いは捕手かもしれない。



 昨年5年ぶりのリーグ制覇を果たした巨人は順調な戦いぶりを披露。その巨人とCSファイナルで戦った阪神は、逆に勝てない日々が続く。

 戦前の予想では2強に挙げていた解説者も多かった。延期も挟み難しい開幕とはいえ、好対照な戦いぶり。原因は現状における捕手の力量差とも考えられる。

「今の阪神は梅野のチーム。チームの不沈がかかっていると言っても過言ではない」

 阪神担当記者から真っ先に出てきたのは、正捕手・梅野隆太郎の名前だった。

 13年ドラフト4位で福岡大学から阪神に入団。 アマチュア時代から打撃に関して定評があり、九州六大学野球で通算28本塁打、打率.388の結果を残し、4年夏には日米大学野球の代表にも選出された。

 1年目から一軍入り、開幕3戦目で早々とプロ初安打を放つ。その後も他捕手との併用や2軍降格時期もあったが試合出場を重ね、17年からはレギュラー捕手定着を果たした。

 18年からは2年連続、捕手部門のゴールデングラブ賞受賞。特に19年は123補殺でNPB歴代最高を記録するなど、打撃のみではなく「捕手・梅野」としての評価も高めていた。

「打撃では例年通り、勝負強い打撃を維持している。問題は捕手として迷いが生じていること。昨年のように投手陣に絶対的な力があれば良いが、そうでない場合は失点を重ねてしまう。捕手としての資質が問われている。捕球や送球に関しては言うことはないので、配球部分で投手をしっかりリードすることが求められている」

 必要なのは打者を打ち取るための配球。阪神担当記者は、梅野の成長が今こそ必要になると語る。

 ブルペン陣の不安が捕手・梅野の頭を悩ませているのは間違いない。

 昨年の阪神はブルペン陣の踏ん張りでCS進出を果たしたと言える。クローザーの藤川球児、セットアッパーのピアース・ジョンソンが絶対的安定感を誇った。守谷功輝、岩崎優、島本浩也、ベテラン能見篤史もフル回転し、試合終盤の失点を最小限に防ぎ逃げ切る形ができあがった。

「ジョンソンのメジャー復帰が1番痛い。正直、あそこまで良い投手と思わなかった。球の威力で打者を圧倒できる投手がいるのは大きい。また守谷、島本も年間通じての実績をあげたのは初めてで、疲労なども心配される。能見は年齢的に昨年ほどの期待はなかなか難しい。先発で安心できるの西勇輝くらい。投手陣のやりくりが大事になる年だからこそ、捕手=梅野にかかる重要性が増す」(阪神担当記者)

「良く練習する選手。試合前もかなり早く来て守備練習に取り組んでいる」

 阪神球団関係者は梅野の姿勢に関して賛辞を惜しまない。

「守備と打撃の両方が期待される。もともと打撃は好きなのでバットをよく振る。それだけでなく捕手の練習も積極的におこなう。両方やるには時間がいるので球場入りも早くなる。捕球、送球などの基本練習を汗びっしょりになってやる。その後もスコアラーなどと配球の研究もする。一生懸命やっている姿勢を誰もが見ているので、結果につながって欲しいのですが」

 肩には定評があったが、地道なフットワーク強化を繰り返したことで『補殺王』となるまでになった。梅野の試合前練習は阪神の風物詩でもある。

 一方で捕手出身の球界OBは「配球に関してかなり悩んでいるのでは」と分析する。

「打てる捕手は打者目線で配球する。自らの好きな球を避ける傾向になり、それだけだと狙われやすい。打者の弱点を突く配球も織り交ぜながら、最善の球種を選ぶことが重要。その辺で迷いが生じている。矢野燿大監督も捕手なので梅野の気持ちがわかる。リフレッシュを兼ねて休ませたりしているのですが」

 配球に絶対はない。多くの経験を重ね成功と失敗を繰り返すことでレベルも上がる。梅野にとって試練の時期である。

 阪神とは逆パターンなのが巨人。経験豊富なベテラン炭谷銀仁朗の存在が光る、とは巨人担当記者。

「本来なら小林誠司、大城卓三のどちらかを正捕手起用したかった。小林の肩は球界イチであり、大城の打撃は中軸を任せられるほど。しかし小林はケガ、大城は新型コロナウイルス感染で出遅れ、炭谷を起用せざるを得なくなった。しかし小林、大城ともに梅野同様、配球に心配があった。結果的に守備面で炭谷の存在感が大きくなっている形。巨人にとっては不幸中の幸いだった」

 炭谷は昨年、西武からFAで加入したが、「リードは一歩半リードしている」と原辰徳監督も認めるほど。経験豊富で埼玉西武時代は選手会長を任されるほど人望も厚い。ここへ来て炭谷獲得が吉と出た形になっている。

 若手捕手が育つには経験豊富な捕手が近くに現役選手としていることも重要。広島には大べテラン石原慶幸がいて、会沢翼が日本を代表するまでに成長を果たした。ソフトバンクでは高谷裕亮の側で、甲斐拓也がレベルアップを成し遂げた。

「現在の阪神には経験豊富な捕手がいない。かつて在籍した城島健司は梅野と入れ違い。藤井彰人とは2年間しか共にプレーできなかった。現役選手として、もっと長い間同じ立場でいれば良かったのでしょうが。やはり監督、コーチとして接するのでは、距離感もできてしまう」(捕手出身の球界OB)

 阪神在籍はメジャー経験もある城島が10〜12年。大阪近鉄、楽天にいた『男前』こと藤井は11〜15年。阪神には名捕手2人がいただけに、在籍タイミングのズレが悔やまれる。

 巨人には現二軍監督・阿部慎之助の存在があったと巨人担当記者は語る。

「現役晩年は一塁手や代打専門だったが、共に同じグラウンドに立った経験は大きい。阿部は兄貴分的性格で、食事などグラウンド外でも積極的に交流を図る。捕手として、プロとして、若手選手にとって得るものは大きかったはず」

 小林は6年間、大城は2年間だが阿部の現役時代を知っている。捕手が育つ環境を見ると、若干だが巨人有利に見える。

「日本一になります」

 矢野監督以下、ほとんどの選手が宣言した言葉が虚しくなる惨状だ。昨年終盤の強さは幻だったのか。

 まだシーズン序盤とはいえ、通常よりも短いシーズン。流れを変えることができる交流戦も開催されない。早急にチーム立て直しを図らなければ取り返しのつかないことになる。

 梅野が正捕手であることには誰も異存はない。だからこそ打つだけでなく、守りの柱『配球』で投手を牽引することが求められる。日本一の捕手となるための梅野自身の試練。これは同時に今季の阪神を左右する大案件だ。