一過性の勢いではない。広島の堂林翔太が今季27試合に出場し、リーグトップの打率3割8分9厘、6本塁打、19打点と開幕から打ちまくっている。近年は伸び悩み、昨季は自己最少の28試合出場。シーズン前は1軍当落線上の立場だったが、今や「不動の3番」に。広島ファンからは「今度こそ堂林を信じていいの?」と驚きの声が上がるほどだ。プロ11年目の「覚醒」は本物だろうか。



 愛知・中京大中京高出身の28歳。同世代は大リーガーの筒香嘉智(レイズ)と菊池雄星(マリナーズ)のほか、今宮健太(ソフトバンク)、山川穂高(西武)、同僚の大瀬良大地とスター選手がズラリ。その中でも堂林は早くに台頭した。プロ3年目の2012年に144試合出場し、打率2割4分2厘、14本塁打、45打点。逆方向の右翼にもアーチを飛ばすスケールの大きい打撃と甘いマスクでファンの心をつかんだ。

 だが、試練が待ち受けていた。堂林は同年にリーグワーストの150三振。長打力がある一方、確実性に欠けていた。翌年以降はボール球になる球を空振りする悪癖が修正できない。若手が台頭してレギュラーの座が危うくなると、結果を求めて思い切りの良い打撃が影を潜めた。広島がリーグ3連覇で黄金期を築いた16〜18年は1、2軍を行き来し、影が薄かった。

 広島の担当記者は、こう話す。

「性格が素直で優しい半面、何でもアドバイスを受け入れて、自分を見失っていたように感じました。でも、後輩がどんどん出てきて危機感を覚えたのでしょう。近年はなりふり構わず必死でした」

 昨オフに3歳下の鈴木誠也に頭を下げて自主トレに参加。鈴木とはプライベートでも親交が深く、シーズン中も野球談議を交わしていたが、自主トレを共にして大きな刺激を受けた。技術面では頭が突っ込む悪癖を指摘され、下半身主導の打撃フォームに修正。柔軟性が出て持ち味の右中間へ伸びる打球が増えた。

 また、じっくり球を見極められるようになったことから選球眼も向上。今季はまだ22三振で、確実性が増した。

 今後は相手のマークが一層厳しくなることが予想される。だが、今の堂林は簡単に状態が崩れるほどもろくはない。近年はトレード要員とまでうわさされた「鯉のプリンス」は、チームに不可欠な存在だ。(成績は7月27日現在)(梅宮昌宗)

※週刊朝日  2020年8月7日号