日本サッカーは「ゴールキーパー(GK)後進国」であると言われている。特にW杯4大会連続でメンバー入りした川口能活と楢崎正剛の2人が引退して以降、弱点の一つとして指摘されてきた。



 日本人の身長、GK人気の低さ、GK人口とGK専門コーチの少なさに、GKの練習に適さない土のグラウンドといった様々な環境因子に加え、2010年のW杯南アフリカ大会でこそ好パフォーマンスを見せた川島永嗣が、2014年のブラジル大会、2018年のロシア大会とミスから失点したこともあり、世界と戦う上で“足りない部分”として認知されていることは間違いない。しかし、今後はその認識が大きく変わる“明るい未来”が待っているかもしれない。

 現在、森保ジャパンで最も多くの試合でゴールマウスを守ってきたのは権田修一(ポルティモネンセ)であるが、彼もすでに31歳となった。今後の日本代表の正GKを考えた際、真っ先に名前が挙がるのが、昨年のコパ・アメリカに出場した大迫敬介(サンフレッチェ広島)だろう。

 1999年7月28日生まれの21歳。アンダー世代から年代別代表に選ばれ続けた秀英で、トップ昇格2年目の2019年に一気にレギュラーに定着した。抜群の反射神経を持っているが、決して派手なセーブを連発するタイプではなく、冷静な判断とポジショニングの良さでゴールマウスに鍵をかける。身長187センチと高さも十分で、物怖じしないメンタルの強さも魅力で、21歳とは思えない安定感をすでに身に付けている。

 だがこの大迫も、うかうかはしていられない。なぜなら大迫よりも下の世代が“ハンパない”からだ。その逸材が、浦和レッズの鈴木彩艶(スズキ・ザイオン)である。2002年8月21日生まれの17歳。ガーナ人の父と日本人の母を持ち、アメリカ生まれ埼玉育ち。何より目立つのが189センチ、91キロという、どのスポーツでもワールドクラスになれるサイズ感。長い手足によってゴール前での威圧感は圧倒的だ。

 シュートに対する反応も鋭く、キャッチした後には飛距離抜群のパントキック、あるいは超強肩スローイングでカウンターを発動させる。小学生の頃から浦和の下部組織で育ち、15歳でU−17W杯、16歳でU−20W杯のメンバーに飛び級で選出。東京五輪のメンバー入りだけでなく、現在34歳の西川周作からレギュラーを奪い取った際、成長速度はさらに早まることになるだろう。

 この規格外の「ザイオン」と双璧をなすのが、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)だ。2001年1月23日生まれの19歳。ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれ、身長193センチを誇る。小学生までFWでプレーしていたこともあって足元の技術も高い。中学でGKに転向し、柏レイソルU−15から同U−18でプレーし、2018年にカタールで開催されたユース年代を対象としたアルカス国際カップで大会ベストGKに選出されると、そこで対戦したポルトガルの名門チームからオファーを受け、2019年1月に海を渡った。当初はU−23チームに所属していたが、5月からはトップチームに本格合流。身体能力の高さに加え、優れた環境が整っているだけに今後の成長が楽しみでならない。

 その他にも、大迫同様に昨年のコパ・アメリカで代表入りした早稲田大出身の23歳・小島亨介(アルビレックス新潟)に、流通経済大から横浜F・マリノスに入団した22歳のオビ・パウエル・オビンナ(栃木SCに育成型期限付き移籍)、フランス人の父を持ちスペインでプレーする22歳・山口瑠伊(エストレマドゥーラ)の東京五輪世代。さらに将来ガンバ大阪の正GKを担うことを期待される19歳・谷晃生(湘南ベルマーレにレンタル移籍)、今季Jデビューした18歳・小畑裕馬(ベガルタ仙台)と、次々と将来有望な若手GKが頭角を現わしつつある。今後、彼らが切磋琢磨しながら期待通りに成長できれば、日本が「GK大国」と呼ばれる日が来るかも知れない。少なくとも、外国人GKが数多くゴールマウスを守っている現在のJリーグのゴール前の景色は大きく変わるはずだ。

 日本サッカー史上最大の番狂わせである「マイアミの奇跡」における最大の立役者はGKの川口能活だった。欧州列強の国々を見ても、スペイン代表の黄金期にはイケル・カシージャスが好セーブを連発し、ドイツ代表の2014年W杯優勝時にはマヌエル・ノイアーが暴れ回り、2018年のW杯で優勝したフランス代表には主将としてチームを引っ張ったウーゴ・ロリスがいた。日本に世界基準のGKが育ち、「GK大国」となった時、日本代表が再び奇跡を起こし、W杯を制するチャンスが生まれることになるのかも知れない。その日を、心待ちにしたい。