筆者は一年で平均して約300試合アマチュア野球を現場で見ているが、基本的にドラフト候補となる有望選手を追いかけていることもあって、プロ選手顔負けのプレーを目撃することも少なくない。そこで今回はそんな驚きのパフォーマンスを見せたアマチュア選手について、ここ数年レベルアップが目覚ましい高校球児に絞って振り返ってみたいと思う。なお対象は筆者がデータをとり始めた2001年以降にプレーした選手としている。最終回の今回は投球編だ。



 この20年で多くの好投手が登場したが、最も安定していた投手となると藤浪晋太郎(大阪桐蔭→2012年阪神1位)になるだろう。初めて見たのは2年夏の大阪大会初戦の関大北陽戦。開会式直後の優勝候補同士の対戦ということで多くの注目を集める中で被安打3、14奪三振完封という見事な投球を見せた。

 ただこの時はまだ上背の割に筋肉量が少なく、スケールが先行している印象だった。大きな変化を感じたのは翌年春のセンバツからだ。初戦では大谷翔平(花巻東→2012年日本ハム1位)との対戦で注目を集めたが、この時点では頭一つ藤浪がリードしていたことは間違いないだろう。

 夏の甲子園でも4試合を完投してわずか3失点(自責点2)、準決勝と決勝ではともに2安打完封という離れ業をやってのけたが、終盤でもストレートの勢いが衰えず、試合後のインタビューに涼しい顔で答えていたところにも底知れぬポテンシャルを感じた。ここ最近では奥川恭伸(星稜→2019年ヤクルト1位)、高橋宏斗(中京大中京→2020年中日1位)の二人も全てにおいて高レベルだったが、トータルとしての安定感では藤浪の方が上だったと言えるだろう。

 安定感という意味ではそこまでではなかったものの、サウスポーで最もインパクトが強かったのが菊池雄星(花巻東→2009年西武1位)だ。2007年夏の甲子園に1年生として出場した時はちょっと楽しみな球の速いサウスポーという印象だったが、3年春の選抜では体つきも投げるボールも別人のようになっていて驚かされた。

 150キロを超えるストレートはもちろんだが、スライダーとのコンビネーションも抜群。初戦の鵡川戦では8回ツーアウトまでパーフェクトピッチングと、もう少しで大記録という快投を見せたが(最終的には2安打完封)、相手打線から全くヒットが出そうな雰囲気は感じられなかった。最後の夏は故障もあって少しフォームを崩していたのは残念だったが、同じ150キロサウスポーとして高い注目を集めた辻内崇伸(大阪桐蔭→2005年高校生ドラフト巨人1位)と比べても全てにおいて上だったことは間違いないだろう。

 そしてトータルして最もインパクトが強かった投手を一人挙げるとすれば、やはり佐々木朗希(大船渡→2019年ロッテ1位)になる。初めてその投球を見たのは2年夏の盛岡三戦だったが、まず驚かされたのが試合前の遠投だ。センターからライトポール方向に向かって投げていたが、その勢いはこれまで見たことのないものだったのだ。試合でも初回から150キロ以上を連発して2失点完投勝利をおさめているが、この年に3年生だったとしても1位指名は確実だっただろう。

 最初に強烈なインパクトを受けると、二度目以降は見る側のこちらもハードルが上がって物足りなさを覚えることも多いが、佐々木の場合はそのようなことが全くなく、3年春以降も常に衝撃を与え続けてくれたという意味でも印象深い投手だ。3年春の実戦初登板となった作新学院との練習試合では10度を下回る寒い気温の中で最速156キロをマーク。相手のバッターが頭に当たるボールを空振りしてしまうという強豪校の選手ではなかなか見ないシーンもあった。

 そして夏の岩手大会では大谷以来となる公式戦での160キロをマークしたが、その数字以上にまだまだ余力を感じさせるものだった。そしてU18日本代表の壮行試合では投球練習のストレートを水上桂(明石商→2019年楽天7位)がキャッチできないということにも驚かされた。これほどの投手が甲子園常連の強豪校ではなく、地方の県立高校から出てきたということも二重の衝撃である。

 ルーキーイヤーとなった2020年は結局一度も実戦で登板することなくシーズンを終え、将来性を心配する声も聞こえてくるが、体力面の不安さえなければ歴代の投手の中でもあらゆる意味でナンバーワンになる可能性を秘めていることは間違いない。2021年はきっと周囲の不安を払しょくするような鮮烈な実戦デビューを見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。