“チャラさ”も戦略? IT社長・前田裕二の今をつくった女子とは

“チャラさ”も戦略? IT社長・前田裕二の今をつくった女子とは

 日本一の収益を誇る動画配信アプリ「SHOWROOM」を展開する、気鋭のIT社長・前田裕二さん。8歳で両親を失い、路上ライブ体験から、累計300万ダウンロードを超えるサービスを生み出しました。各界から注目を集める若手社長の今に、作家の林真理子さんが迫ります。



*  *  *
林:今、前田さんは私たちがやっている「エンジン01」(文化人のボランティア団体)に参加していただいて、みんなの人気者ですけど、最初にいらしたとき、「あの茶髪のチャラい男の子、誰?」みたいな雰囲気がありました。

前田:はじめは「覚えてもらわなきゃ」と思ってたので、髪の色も明るくしていました(笑)。最近、映画「カメラを止めるな!」がヒットして拡散しましたけど、あれは拡散に必要な要素である「共感」と「落差」の二つが入っていたからだと思うんですね。まず、「カメラを止めるな!」は「たった300万円でつくったのにおもしろい」という落差があった。かつ、前提としてあるのは共感。つまり、自分たちの言いたいことを代弁してくれてるというのが大事で、「お金なんか使わなくても、アイデア次第でいろんなことが考えられる」というのが共感の要素ですね。この二つの要素の掛け算が拡散をもたらした。

林:なるほど……。

前田:僕自身もそうで、なんでSHOWROOMを立ち上げたかということに対して、僕は貧乏だったり、親がいなかったり、いろいろあったんですけど、「何も持ってなくても頑張れば何とかなるんだ」というのは、いま同じく何も持っていない人からすると共感してもらえる部分なのかもしれない。ただ、自分には「落差がないな」と思って。その一つとして、茶髪にしてみたんです。

林:そうか。髪の毛きちっとして、「いい青年だろ。苦労してさ」みたいな感じはイヤだったんですね。

前田:おもしろくないなと思ったんです。でも、今、もうそういう時期は過ぎたと思うので、髪をふつうにしました。もともと茶髪でいたかったわけではないので(笑)。

林 ちょっと前まで、努力した人って「ウザい」とか言われて、私が『野心のすすめ』を書いたのが6年前かな。けっこう売れたんですけど、「夢とか野心とか言われたくない」とか反発も多かったですよ。

前田:そうなんですか? 僕、林さんの『野心のすすめ』はメッチャクチャ心に刺さりましたけどね。

林:でも、前田さんは年齢が近いからスッと入っていけるということもあるんですよね。まだ31歳でしたっけ? もともとはすごいエリートなんですよね。早稲田の政経学部を出て、外資系の投資銀行に行って。

前田:いやいや、それだけ見るとエリートっぽく見えちゃうんですけど、ぜんぜんそんなことないです。東京といっても葛飾出身ですし。

林:親御さんを早くに亡くしたんですよね。

前田:父は僕がもの心ついたころにはいなくて、母は8歳のときに亡くなって。

林:ふつうだったらグレるけど、ちゃんと大学にも行ったんですね。

前田:道を踏みはずさなかったのは、兄のおかげだと思いますね。僕、小5の終わりごろにけっこう大きく怒られるようなことをやってしまって、兄貴が見たことないぐらい号泣したんです。それで「兄貴を幸せにしなきゃ」と思って、変わりました。

林:お兄さんは自分が大学に行くことをあきらめたんでしょう?

前田:兄貴は医者になりたかったんです。本当に頭がよくて、医学書とか読んでずっと勉強していました。でも、兄貴が高校3年生の夏にお母さんが死んじゃったので、医者になることをあきらめて……。

林:今からでも遅くないかもよ。うちの秘書のお兄さん、会社勤めしながら勉強して、47歳のときに弘前大学医学部に受かりましたよ。

前田:えっ……。

林:もっとすごいのは、お兄さんに娘がいて、彼女もお父さんが受かる前年に弘前大学医学部に入ってるんです。お父さんより一足先に。

前田:ものすごくいい話ですね。それ、兄貴に提案してみようかな。

林:ぜひ。まだ遅くないですよ。すいません、話を途中で折ってしまって。

前田:いえ、ありがとうございます。話を戻して、母が亡くなって、僕の存在があったから兄ちゃんが医者になれなかったことは事実なんですよね。一緒にハローワークに行って、カウンターで求人が入ったファイルをポンと渡されて、兄ちゃん、ファイルを開いていちばん最初にあった仕事を、「これお願いします」と言って、今日もその仕事に行ってるんです。今41歳だから、18歳から23年間ずっと同じ仕事をしてるんですよ。

林:家族をすごく大切にされてるんですね。

前田:兄ちゃんは家族との時間が一番。価値観が決まってるんですよね。それがすごいなと思って。僕は仕事にかける人生を選んでるわけなんで、「頑張らなきゃな」と思って、それがモチベーションになるんです。

林:前田さん、このあいだオペラを見に来てましたけど、すごいですね。何事に対しても貪欲というか。

前田:エンタメをアウトプットする企画とか、人を楽しませる仕組みをつくらなきゃいけないんで、インプットが絶対必要だと思っていて。だから意識的にオペラとか映画とか舞台とかを見に行くようにしています。

林:1日3時間しか寝てないって本当ですか。

前田:平日はそうです。週末はもっと寝ますけど。

林:3時間しか寝てなかったら、見てて寝ちゃうんじゃない?

前田:ワクワクしていたら、そんなに眠くならないです! あとは基本、座らないで立ってるとか、で頑張ってます(笑)。

林:体、気をつけてくださいよ。いくら若いからと言っても。

前田:最近、健康には気をつけようと思って、そろそろ人間ドックにも行かなきゃなと。

林:背は高いし、容姿はカッコいいし、英語もパーフェクトだし、これから何でもできますね。

前田:いやいや、自分の経歴に対してコンプレックスがずっとあるんです。小学生のとき、地域で一番の塾に行ってる同級生の女の子が、素数の話を「知らないでしょ」みたいな感じでドヤ顔で黒板の前で僕らにし始めた映像が、いまだに頭の中に残ってるんですよ。そのとき僕はほんとに悔しくて、それはその女の子がすごいんじゃなくて、塾に行けてる環境がすごいんじゃん、と思ってしまったんですよね。でも自分は塾には行けなかった。お金がないこととか、機会がないことが悔しくて仕方なかったんです。ほんとにコンプレックスのかたまりだったなぁと。

林:今の前田さんをつくったのはその女の子なんだ。その人、いま何をしてるんですか。

前田:たぶん地元でふつうに。

林:今度「あいつ今何してる?」(テレビ朝日系)に出てほしいな(笑)。

前田:アハハハ。確かに出てほしい(笑)。

※週刊朝日  2019年5月31日号より抜粋


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