人間の目にいちばん近い画角のレンズが「標準レンズ」といわれるが、実際、写真家にとっての標準レンズは何ミリなのだろうか。

『アサヒカメラ』で写真家128人にアンケートをした結果、大きく分けて「35ミリ派」と「50ミリ派」が存在することがわかった。(図表参照)その数はほぼ同数。スナップ写真を撮る2人の写真家に聞いてみた。

 まずは35ミリ派の百々俊二さん。

「スナップ写真を撮るときは35ミリが圧倒的に多いです。人物をとらえたときに背景の町とか風景を画面に取り込みやすい。

 これが50ミリになると、人にだけちょっと寄ってしまう感じになるから、もっと下がらなきゃいけない」

 50ミリ派の北井一夫さんはどうだろう。

「50歳までだったら『35ミリ』って、答えたと思うよ。若いときって近づいて撮るじゃない。『新世界物語』(1981年)、『フナバシストーリー』(89年)のころはライカのSUMMILUX−M 35ミリメートルf/1.4で撮っていた。変わったのは90年代、北京を撮るようになってからだね。

 最初は黄砂のせいなのか、なんか描写がガサガサだった。で、Elmarみたいな古い玉ならいいんじゃないかと思って、レンズを変えてみたら、写るわけ。それからずっとElmar 50ミリメートルf/3.5。同じElmarの35ミリF3.5も買ったんだけど、使うのは、ほとんど50ミリ。どちらの描写もほとんど変わらないんだけどね。やっぱり、年とともに焦点距離が伸びるっていうじゃない。それじゃないかな。

 まあ、これ以上は伸びないと思うけれど。やっぱり、あまり近づくと疲れるじゃない。ちょうど50ミリの画角が楽でいいわけ」

 ちなみに300ミリ以上の超望遠域の焦点距離を「標準レンズ」と回答した人は飛行機やスポーツ、野生動物、野鳥などの撮影をライフワークとする写真家である。(文・米倉昭仁/編集部)

※『アサヒカメラ』2020年1月号より抜粋