昨今の写真環境を見渡してみると、レンズ交換式のいわゆるミラーレス一眼カメラの台頭が著しい。いまだ一眼レフの愛好家も多いとはいうものの「はたしてミラーレス一眼は鉄道写真撮影に向いているのか?」という疑問について改めて考えてみる。



【鉄道写真撮影でも光るミラーレス一眼の高画質】

 ミラーレス一眼の“売り”のひとつにボディーの軽量化とコンパクト化がある。一眼レフの“レフ”であるミラーをなくし、ペンタプリズムを廃して電子ビューファインダー(EVF)化することでそれらは実現できた。しかしミラーレス一眼の構造による利点はそれだけではない。最も大きな利点はフランジバックを短くできたことに加え、マウントの大口径化によって得られた高画質化ではないだろうか。フランジバックとはレンズマウント面からイメージセンサーまでの距離で、一眼レフはミラー機構があるため37〜48ミリであるのに対し、ミラーレス一眼は16〜20ミリ(どちらもセンサーサイズがフォーサーズ、APS−C、フルサイズの機種)とかなり短い。フランジバックが短くなると超広角〜広角での高画質化に結びつく。レンズには光学的主点というものがあり、望遠レンズはその主点がカメラ側に伸びるのでフランジバックの長短による影響はあまりない。しかし、主点がレンズ側の短いところにある超広角〜広角レンズはフランジバックの長短の影響は大きい。一眼レフではフランジバックが長いぶん、主点をイメージセンサー側に伸ばすためのレンズ(レトロフォーカス構造)を前後に加えなくてはならず、特に前玉側のレンズが起こす各種収差が画質低下の原因にもなっていた。
レンズ設計の自由度が広がり、性能、画質も大幅にアップ

 しかし、ミラーレス一眼はフランジバックが短くなったぶん、光を大きく曲げるレンズが必要なくなるので各種収差も少なくなる。加えてマウントの大口径化はイメージセンサーまでの光束をさえぎる障壁(マウント径)が広がるので後玉側の光を大きく曲げるレンズも必要なくなり、後玉が素直にイメージセンサーへ光束を送ることができる。

 実際のレンズ設計はそう単純ではないが、これによって高画質化が実現でき、さらにはレンズ自体の小型化にもつながっている。レンズ設計の自由度も上がり、ニコンの「NIKKOR Z 58ミリメートル f/0.95 S Noct」のような明るいレンズも設計できるなど、ミラーレス一眼の短いフランジバックと大口径化はメリットになるところが非常に多い。

 鉄道写真撮影でいえば、超広角〜標準レンズは鉄道風景や鉄道スナップ撮影で多用する焦点距離。特に超広角では遠くの景色や列車にピントを合わせても手前の風景も収差が少なく、ちょっと絞りを絞るだけで画面の四隅を見てもディテールがしっかりと出る気持ちのよい作品に仕上がる。さらに高画素機であればあるほど、その解像感の高さと高画質を堪能できるはずだ。
 ちなみにミラーレス一眼の中にはマウントアダプターを介して既存の一眼レフなどのレンズが使える機種もある。いまだにマウントアダプターが画質の低下を招いたり、AF速度が落ちているのではという声も聞かれることがあるが、このような人はマウントアダプターに対してテレコンバーターのようなイメージを持っているのだろうと思う。マウントアダプターは一眼レフ用レンズの主点をミラーレス一眼の短いフランジバックに合わせるための筒状のスペーサーにすぎない。またAF速度に差を感じるのは位相差AFと像面位相差AFのAFシステムの違いによるものだろう。どちらもマウントアダプターの影響はないといってよいので、安心して今までの相棒である一眼レフ用のレンズといっしょに鉄道写真撮影の旅をしてほしいものだ。

写真・文=助川康史

※『アサヒカメラ』2020年2月号より抜粋。本誌では「EVF性能」や「ISO感度」などに関する記事も掲載している。