気持ちのいい天気が続くこの時期、緊急事態宣言下で、写真の撮影に出かけられず、残念に感じている人も多いのではないだろうか。だが、これを写真について学ぶいい機会ととらえ、カメラの設定を理解することに時間を使ってみてはどうだろうか。ここでは、撮影画像の記録方式「RAW」について、JPEGと比較しながら長所や短所を紹介、そして「RAW現像」の基本的なやり方について解説する。



*   *  *
 デジタルカメラの撮影設定で真っ先に行うのが、撮影画像をメモリーカードに記録する際にどのファイル形式にするかの選択だろう。ほとんどのカメラがRAWかJPEG、そしてRAW+JPEGの同時記録の3種類のファイル形式に加え、それぞれの画質をHigh(ハイ)やFine(ファイン)などの高画質やNormal(標準)やStandard、Low(低画質)などから選び、さらに画像のサイズ(ピクセル数)を選択できるようになっている。

 JPEGはご存じのとおり、スマートフォンやパソコンなど、たいていの機械で開ける汎用の形式だ。カメラ内のさまざまな画像処理が施され、画として完結している。高い圧縮率で記録されるためファイルサイズが小さく扱いやすく、すぐに誰かに見せたり印刷したりと二次利用が可能だ。

 しかし、JPEGは人の目には感じづらい部分を削って圧縮率を上げている(ファイルサイズを小さくしている)ため、パソコンで画像調整するにしても自由度は低く、更に画質の劣化を伴う。つまり、JPEGで撮影するなら、利用目的に合わせ適切な画質や画像サイズに設定するとともに、露出やホワイトバランスなどの各種パラメーターも事後調整の必要がないようにしっかり合わせて撮影すべきだ。

■情報は残っているけど完成されていないのが「RAW」

 一方のRAWは英語で生(ナマ)を意味し、簡単にいうとセンサーが受け止めた光の情報を、ほぼそのままデジタル信号化した状態で記録したファイル形式だ。つまりそのままでは画像ではなく、基本的にはメーカー独自の形式だ。撮影したカメラや、そのカメラに対応する専用アプリをインストールしたパソコンなどでその絵柄は見られるが、撮影時の設定で処理したらこうなるという状態を表示しているのにすぎない。

  例えばSNSなどネットに公開したり、メールに添付したり、またはプリント出力をするにはJPEGやTIFFなど汎用性のあるファイルへ現像と呼ばれる変換作業が必要になる。RAWデータは、ファイルサイズは大きく含まれている情報量も多いので、ホワイトバランスをはじめ様々な絵づくりのパラメーターの調整や撮影時とは異なる設定へ変更でき、レンズの光学補正の調整や、色空間の変更まで自由に行えることが最大の利点だ。暗部や明部の情報もJPEGより多いので、画像の明るさの調整幅も広い。事後処理のプロセスで何通りもの絵づくりパラメーターやテイストを変更した画像を生成できるだけでなく、撮影時の露出や設定ミスも救済できるのである。

■初めてのRAW現像のための基本的なワークフロー

 RAWデータを扱うことは決して難しくない。パソコンでレタッチソフトを使ったことがある人なら、操作自体は似たようなものだ。調整するたびに画像に反映していくのではなく、最後にまとめて適用、書き出すかの違いだけだ。何度もやり直しがきくので、いろいろ試してみよう。

 RAW現像で最も手軽な手段はカメラ内RAW現像機能を使うことだが、なければパソコンやタブレット用に開発されたアプリ(=RAW現像ソフト)を利用することになる。RAWはカメラごとの専用形式なので、対応していなければならない。基本的に、無償提供されるカメラメーカー純正のものを使う人が多いだろう。専用ゆえに調整機能やパラメーターなどの項目・名称は、カメラ本体と統一されていて扱いやすい。同メーカーの対応カメラであれば利用できるが、他メーカーのRAWファイルは扱えない。

 一方で、さまざまなメーカーのカメラに対応した汎用のRAW現像ソフトもある。有名どころでは、Adobe CameraRAW、Capture One、DxO OpticsPro、SILKYPIXなどがある。全体の調整だけでなく部分的な調整ができるものもある。ただし、必ずしも自分が持っているカメラが対応しているとは限らないので、購入前にしっかり確認しよう。まずは体験版を試してみるとよい。

  ここでは代表的なレタッチソフトであるAdobe Photoshop(アドビ・フォトショップ)などに付属するAdobe Camera RAW(アドビ・カメラロー)を使ったRAW現像のワークフローを紹介する。基本的な手順はほかのRAW現像ソフトでも大きな違いはない。

■Adobe Camera RAWでRAW現像

[手順1]画像を開く

現像したいRAWファイルを開く。Photoshopを開いてRAWデータを読み込ませれば、自動でCamera RAWが開く(Camera RAW単独での起動はできない)。その他のRAW現像ソフトでも、起動してRAWデータを読み込ませればいい。このとき表示されるのは、撮影時の設定を反映したもの

[手順2]画像を調整する

a.好みの明るさに調整
夕日の逆光で撮影したがもう少し船体のディテールを出したい。水面のリフレクションなどが飛ばないようにハイライトを「−50」に調整したうえで露光量を「+0.75」にして全体を明るく補正しながらシャドウも「+50」で持ち上げている

b.ホワイトバランスを変更
本来AWB(オートホワイトバランス)は白を再現するため夕景の赤味を抑えてしまう。夕景写真では雰囲気が薄れてしまうのであえて赤味を強調するため。色温度を高く設定し(10000K)、赤味をのせた。必要に応じて「自然な彩度」の数値を高めてもいい

[手順3]JPEG/TIFFに保存する

Camera RAWでは、保存などの操作はPhotoshop側でおこなう。Camera RAWで調整が済んだら「画像を開く」をクリックすれば、その内容を反映した写真がPhotoshopで開く。もちろん、そのままPhotoshopで編集もでき、焼き込みなどの部分修整や、邪魔な被写体の除去、ゴミ取りなど細かな編集もこちらで行う。そののち、JPEGやTIFFファイルに書き出して保存する。
(写真・解説:宇佐見 健)

※「アサヒカメラ」2019年9月号「基礎から始める撮った後のこと」より抜粋