新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため自宅にいる時間が増えた一方で、慣れない生活にストレスがたまる。そんななか、写経が注目されている。在宅でできるうえ、心が穏やかになれるからだ。それほど費用はかからず、年齢や性別も問わない。不安な時代だからこそやってみたい。





 記者も挑戦してみた。成田山新勝寺(千葉県成田市)に申し込むと、写経用紙3枚と筆が送られてきた。墨を使うのは小学生以来だ。

 文字を写すだけなのに、心の乱れが文字に表れる。最初は無心だったが、次第に「無の字が多いな」「墨をつけると文字が太くなるな」などと気が散るようになった。2枚目は途中で仕事の電話が入った。

 3枚目については「心が乱れているときに静めるためにとっておこう」と考えるだけで、いつでも心を整えられるような感覚になった。

「写経に関する申し込みも問い合わせも増えています。在宅写経の申し込み実数も、例年の約2倍にまで増えました」

 成田山新勝寺企画課の中峰照希さんは話す。写経用紙に自由に記入できるお願いごと(願意)も、最近は「新型コロナの早期収束」や「世の中の平穏」が増えているそうだ。

 写経は文字どおり、仏教の経典を写すこと。般若心経が書かれた紙を筆でなぞるのが一般的だ。文字数は寺によって異なるが270字前後で、写すのに1〜2時間ほどかかる。自分の宗派に関係なく寺の道場で写経できるほか、写経用紙を寺から取り寄せたり、ウェブサイトからダウンロードしたりして自宅でもできる。文房具店や100円ショップでも買える。それに筆ペンかフェルトペン、もしくは筆と墨があれば、すぐに始められる。

 日本仏教協会代表理事で、僧侶の中根善弘さんはこう説く。

「自分で経を書き写すことによって、お坊さんが経を読んだのと同様に効力があるものなのです。『長寿』や『健康』など願意を込めて何十枚も書き上げてお寺に奉納されるご年配の方もいらっしゃいます」

 もちろん、書き上げた写経は自宅に置くのもいい。

 また、つい上手に書かなければという気になってしまうが、中根さんは言う。

「心が込められているかが大事です」

 写経を始めるにあたって、記者がまとめた5カ条は下のとおりだ。

■きれいに書こうと思うな
■急いで書き上げなくていい
■書きたいときに書きたい場所で書こう
■一字一字に心を込めて
■書いたものは自宅で大切に保管するか、寺に奉納しよう

 さあ始めてみよう。(本誌・大崎百紀)

※週刊朝日  2020年7月10日号