東浩紀、仏の反マクロン政権デモ「起こるべくして起こったとも」

東浩紀、仏の反マクロン政権デモ「起こるべくして起こったとも」

 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。

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 パリが炎上している。2週間前に生まれた反マクロン政権デモが、ついに12月1日に爆発したのだ。凱旋門を背景に車が炎上する光景に、息を呑んだ読者も多いことだろう。

 デモの直接の原因は、マクロン政権が新年に導入を予定していた燃料税増税にある。けれども、民衆の批判はより広く政権の富裕層優遇姿勢そのものに向けられている。じつはマクロンの支持率は、すでに25%にまで落ちていた。世論調査によれば、国民の8割近くが今回のデモを支持しているという。1年半前、史上最年少の仏大統領として颯爽と登場した国民的カリスマのすがたは、もはや面影もない。

 ところで、近年の大規模運動の例に漏れず、このデモでもSNSが大きな役割を果たしている。デモには中心となる組織やイデオロギーがなく、原動力となっているのは草の根でつながった市民の「怒り」だ。地方発であることも特徴と言われている。2週間前の時点で、フェイスブックではすでに1500以上のデモ関連の地方イベントが組織されており、なかには人口の4分の1を集めたものもあったという。1日の騒動も、フェイスブック・ライブを用いて各所から中継された。

 この状況の分析は難しい。2010年末から11年にかけての「アラブの春」以降、SNS発の大規模抗議運動は一般化した。NYのオキュパイ、香港雨傘革命などがその例だが、10年代後半からは排外主義と結びつく事例も出てきた。トランプ米大統領の支持者が典型である。

 マクロンはもともとエリート中のエリートである。学生時代は有名哲学者の助手を務め、銀行員時代は数億円の年収を手にしていた。30代前半で大統領側近を務め、わずか数年で大統領に駆け上がったそのキャリアは、本来庶民の共感を得るものとは思えない。その点では今回の騒動は起こるべくして起こったとも言えるが、問題はこのあとだ。具体的には来年5月の欧州議会選が焦点となろう。

 反富裕層、反エリートの怨念がSNSを舞台に結晶化し、排外主義へと帰着する光景は、いまや世界中で見られる。フランスがその轍を踏まないことを願うばかりだ。

※AERA 2018年12月17日号


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