「宇宙旅行時代」がもうすぐやってくる? 宇宙輸送に民間参入で現実味

「宇宙旅行時代」がもうすぐやってくる? 宇宙輸送に民間参入で現実味

 地球を周回する「オービタル(軌道)旅行」で、既に実現しているのは国際宇宙ステーション滞在だ。



 宇宙ビジネスコンサルタントの大貫美鈴さんが「宇宙旅行元年」と呼ぶのは01年。米国の実業家、デニス・チトー氏が自費で2千万ドル(当時のレートで約24億円)を支払い、国際宇宙ステーションに約1週間滞在する宇宙旅行を実現した。

 11年に米国の「スペースシャトル」が退役した後、ロシアの宇宙船「ソユーズ」は地球と国際宇宙ステーションを往復する唯一の輸送手段になった。ソユーズの三つの座席のうち一つを米国の宇宙旅行会社「スペースアドベンチャーズ」が世界の富裕層向けに販売。最初の購入者がチトー氏だったのだ。

 ソユーズを使って09年までに国際宇宙ステーションに滞在した宇宙旅行者は7人(現在は休止)。米マイクロソフト社で「ワード」や「エクセル」を開発した天才プログラマーのチャールズ・シモニー氏は宇宙旅行のリピーターとなり2度搭乗した。シモニー氏は「すべてが壮大」との感想を残している。

 オービタル機の搭乗価格は、高度100キロ超の宇宙空間に到達するサブオービタル(準軌道)機より2けた多い数十億円単位になるが、この分野も民間企業の参入によって価格破壊が起きる可能性がある。

 米国は20年代半ば以降、国際宇宙ステーションの運営を民間に移行する方針を示している。民間輸送サービスの主軸を担いそうなのが、米国の「ボーイング」の「スターライナー」と、「スペースX」の「クルードラゴン」だ。NASA(米航空宇宙局)は14年に、この2社にスペースシャトルの後継となる宇宙船の製造を依頼。両社とも19年中に国際宇宙ステーションに向けた有人試験飛行に踏み切る。別格とも言えるのが、テスラCEOのイーロン・マスク氏が創業した米国の「スペースX」だ。「ZOZO」(本社・千葉市)の前澤友作社長が1機丸ごとチャーターしたのは「月周回旅行」だが、スペースXは人類の火星移住を目標に据えている。

 民間運営に移行後の国際宇宙ステーションには大きなビジネスチャンスが見込まれる。

「商業モジュールを接続し、宇宙ホテルなどの商業スペースとしての活用や、独立した商業宇宙ステーションを建設する計画も米国の複数の宇宙ベンチャーで進んでいます」(大貫さん)

 日本企業も着々と市場参入の準備を進めている。

「宇宙商社」を掲げる「スペースBD」(本社・東京都)は18年5月、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟からの超小型衛星放出サービスの民間事業者に選定された。

 同社の金澤誠事業開発部長(30)は「宇宙旅行時代になれば、宇宙商社としての事業機会が急拡大する」との認識だ。

「人が当たり前のように宇宙に行く時代になれば、食料やインフラを宇宙に搬送することが日常化し、マーケットも飛躍的に拡大します。宇宙が産業化するための大きなブレークスルーの一つが宇宙旅行だと捉えています」(金澤さん)

 大貫さんは、これまでの宇宙産業と異なる宇宙旅行ビジネスの特徴を「企業と顧客が直接つながっていること」だと言う。

「顧客目線でニーズや嗜好をつかみ、ホスピタリティーや快適性といったサービスの質の向上を図ることがビジネスの成否に直結します。着心地の良い宇宙服、バラエティー豊かな宇宙食、快適に眠ることができる寝具、簡単に使えるトイレや宇宙で使えるシャワーの開発、さらにはユニークな観光イベントの企画立案も期待されています」(大貫さん)

 関連業者の参入が一気に膨らむことが予想される宇宙旅行ビジネス。世界情勢が混沌とする中、人類の心象風景の更新が地球スケールの共生意識を育むきっかけになれば、と願わずにはいられない。(編集部・渡辺豪)

※AERA 2019年1月14日号


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