姜尚中、日韓関係の“矛盾”「限りなく小さくすることは可能」

姜尚中、日韓関係の“矛盾”「限りなく小さくすることは可能」

 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 ひと頃、左翼的な用語で「敵対的矛盾」と「非敵対的矛盾」という言葉がはやったことがあります。前者は、利害が根本的に対立するがゆえに、力でしか解決されない勢力間の矛盾を指しています。敵対的矛盾の場合、対立する勢力間に実存的な闘争に近い状態が展開するため、非敵対的矛盾のような妥協や歩み寄りによって矛盾を解決しようとする可能性は閉ざされざるをえません。

 それでは、いまもっともホットな話題となっている日韓関係はどうでしょうか。日本と韓国は地政学的にも、体制的にも、またイデオロギー的にも敵対的矛盾関係にあるとは思えません。確かに、レーダー照射をめぐる日韓の間の不信感は、安全保障上の障害になりかねません。また「慰安婦問題」や「徴用工問題」をめぐる対立は、両国の安定的な外交関係を揺るがしかねません。しかし、こうした問題がないがしろにできない深刻な懸案であっても、両国があたかも実存的な敵対的矛盾を抱えているかのような「対立」をフレームアップするのは、賢明とは言えないはずです。

 2017年だけでも韓国から日本を訪れた観光客の数は700万人を上回り、そのインバウンド効果は西日本を中心に飛躍的に拡大しています。また中高生を中心とする若者文化に占める韓国のポピュラーカルチャーの浸透には目を見張るものがあります。民間や自治体、私的な交流も含めて、両国の間のコミュニケーションの裾野の広がりは、日韓の中にビルトインされています。政治や歴史、メディアの摩擦や葛藤によってすべてをリセットするような暴挙は、もはやできなくなっているのです。

 にもかかわらず、両国がまるで敵対的矛盾にあるかのようにフレームアップする言動が後を絶たないのはどうしたことでしょうか。日韓の抱える葛藤や摩擦は、非敵対的矛盾として妥協や歩み寄りによって解消を図ることが不可能なものではないはずです。矛盾を消してしまうことはできないとしても、それを限りなく小さくすることは可能です。非敵対的矛盾を敵対的矛盾のようにフレームアップすることでいったい誰がほくそ笑んでいるのか、想像してみるべきです。


※AERA 2019年1月21日号


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