眞子さまの母子手帳を国際会議に… 紀子さまも助けられた「母子手帳」が世界で共感される理由

眞子さまの母子手帳を国際会議に… 紀子さまも助けられた「母子手帳」が世界で共感される理由

 母子手帳には、親を励ます力がある。「日本発」の健康ツールは四十数カ国に広がり、タイで開かれた国際会議には、紀子さまが眞子さまの母子手帳を持参。共感の輪が広がった。

*  *  *
「母子手帳は日本の多くの母親を助けてきました。私も、その一人です」

 秋篠宮妃紀子さま(52)はそう英語で語りながら、小さな水色っぽい冊子を取り出した。

「ここに長女の母子手帳を持ってきました」

 タイの首都バンコク。昨年12月中旬、3日間にわたり開かれた第11回母子手帳国際会議のオープニングでの一幕だ。約30カ国から訪れた約400人の目が、恩賜財団母子愛育会総裁としてあいさつをする紀子さまの右手に釘付けになった。大きな拍手がわき起こった。

「母子手帳を見ると、子どもたちを育てていた日々を思い出します。私はいつも健診に母子手帳を持っていき、それに医師や看護師が記入していました。家では、成長の記録を自分で記入しながら、子どもたちの発達をたどることができました。母子手帳は私たちの家族にとって、とても大事なものです」

 その場にいた日本人女性がしみじみ振り返る。

「妃殿下であると共に一人の母親なんだと感じられ、とても温かな気持ちになりました」

 妊娠を市区町村に届け出ると交付される母子手帳(母子健康手帳)は、赤ちゃんを迎える心構えが親に芽生える最初のツールだ。外観や一部の内容は自治体で異なるが、基本的な中身は母子保健法の施行規則で定められ全国共通である。妊娠中の日常生活の注意や乳幼児の発育曲線などが紹介され、子どもの体重、身長、予防接種の記録、保護者の思いなどを書き込める。

 1948年に現在の様式がスタートして以来、津々浦々に広がり日本では当たり前の存在だが、母子手帳は「日本発」で世界へ広まった健康ツールでもある。妊産婦や乳児の死亡率改善に貢献した点も注目され、国際協力機構(JICA)などを介して普及。現在はタイ、インドネシア、フィリピン、ガーナ、アンゴラ、アフガニスタンなど四十数カ国で使われている。

 98年から各国で定期的に国際会議を開いてきた国際母子手帳委員会の中村安秀代表(66)は、医師としてインドネシアなどで母子手帳の普及に努めてきた。

「途上国では母子手帳を持つと母親の意識が変わる。健診にも関心を持ち、医師にも質問できるようになる。母子手帳には、母親を励ます力があるんです」

 委員会が掲げる近年の課題は「誰一人取り残さない」こと。静岡県が作り、18年春から母子手帳とあわせて配っている低体重児向けの「しずおかリトルベビーハンドブック」はその好例だ。

 保育器の中の赤ちゃんに「初めて触った日」「初めて抱っこした日」などの記念日を書く項目、「おもちゃを目で追う」「手どうしを握る」など発達や成長を見つける項目……。ふつうの母子手帳だけではカバーしきれないきめ細かさだ。

 タイでは同委員会事務局長の板東あけみさん(67)が紹介。「英語版はないのか」と質問攻めにあった。

 板東さんは京都や静岡などの大学で母子手帳の授業を続けているが、自分の母子手帳を見た学生たちは自らの誕生や成長への親の思いに触れ、心を揺さぶられるそうだ。

「母子手帳は最終的には子どものものなんです。親や社会がいかに自分の命を守ってきたか、その歴史が語られている。若い世代にとっては自身の存在を肯定するツールだし、自分たちが親になる時のテキストです」

(朝日新聞社会部皇室取材班)

※AERA 2019年1月21日号


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