世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。
■未知の領域“レベル3”の恐ろしさとは…

 新型コロナウイルスの影響で、外国への渡航が制限されている。海外取材を主戦場とする私にとっては仕事にならない状況だ。「どうしたものか」と途方に暮れている。



 そんななか、茂木敏充外務大臣は3月31日、アメリカや中国、韓国の全土など49の国と地域を対象に「感染症危険情報」をレベル3に引き上げ、渡航の中止を勧告すると発表した。

 海外旅行をあまりしない人や、外務省のホームページをチェックしない人にとっては、ピンとこないかもしれない。だが、私のような“危険地帯”で取材することが多い者にとっては、「レベル3」とはとんでもないことなのである。

 私が普段からチェックしているのは、外務省の「海外安全ホームページ」に掲載されている「危険情報」である。新型コロナウイルスの影響でレベルが引き上げられたのは「感染症危険レベル」であり、判断基準が異なる別物である。一概に比較はできないが、あくまで参考程度に、以下の「危険情報」のレベルわけをみてほしい。

「レベル1:十分注意してください。」
その国・地域への渡航,滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注意が必要です。
「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」
その国・地域への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には特別な注意を払うとともに、十分な安全対策をとってください。
「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」
その国・地域への渡航は、どのような目的であれ止めてください。(場合によっては,現地に滞在している日本人の方々に対して退避の可能性や準備を促すメッセージを含むことがあります。)
「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」
その国・地域に滞在している方は滞在地から,安全な国・地域へ退避してください。この状況では,当然のことながら,どのような目的であれ新たな渡航は止めてください。
(外務省海外安全ホームページより)

 いかがだろうか。気にする人ならレベル1の「特別な注意が必要」の段階で渡航を諦めるのではないだろうか。単独で取材に行くときには、危険情報は参考程度くらいに参照する。だが企画として出版社やテレビ局にプレゼンするときには、この「海外安全ホームページ」がかなり重要になるのだ。

 といっても、危険レベルが高いほど企画が通りやすいわけではない。むしろ「レベルが設定された場所」というだけで企画が頓挫することもある。「レベル1」でも十分“ヤバい場所”認定を受けるのだ。

 これまでは、「別になんてことないです。むしろ最初から警戒していく分、安全に取材できますよ」なんて苦しい理屈で、なんとか企画を承認してもらってきた。

 私が実際に訪問したなかでの最高は「レベル2」だ。ナイジェリアやフィリピン、メキシコのそれぞれの国の一部などがこれに該当(取材当時)していた。ナイジェリアとフィリピンにはイスラム過激派のテロリストの拠点があるし、メキシコは麻薬戦争の激戦区である。フィリピンのミンダナオ島・マラウィ市で起きたアブ・サヤフ(イスラム過激派)と国軍の戦闘は2017年5月から約5ヵ月ほど続いて甚大な被害を出した。メキシコの南部を取材で訪れた際には、戦闘に出くわしたし、麻薬カルテルに脅されたこともある。ナイジェリアはボコ・ハラム(イスラム過激派)が活動を活発化させており、外国人ジャーナリストがターゲットにされることもある。

 はっきり言って、どれも“ヤバい場所”である。今思えば、無事に戻ってこれたのは運がよかっただけである。今回発令されているレベル3は、現状ではこれらの場所よりも渡航中止をより強く求めるランクに位置付けられたことになる。

 たとえば同じレベル3だと、スーダンやナイジェリアなど、テロリストの活動が活発な地域が挙げられる。レベル4になると、リビアや南スーダン、ソマリア、そしてシリアといった戦闘行為が現在も断続的に起きている場所である。

 繰り返しになるが、いまレベルが引き上げられているのは「感染症危険情報」であるから、一概に従来の危険度と比較できるわけではない。だが、「海外安全ホームページ」でレベル3という表記が出されるのは、とんでもないことなのだ。どれほどの危機感をもってこの対応を受け止めるべきか、その一端が少しでも読者に伝わってくれたらと思う。(文/丸山ゴンザレス)