猛威を振るう新型コロナウイルスは、難民キャンプにも影を落としている。AERA 2020年5月4日−11日号で、ユニセフ教育専門官の井本直歩子さんが実情と危機を伝える。



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 ギリシャには、シリアなどからの難民のためのキャンプが40カ所ほどありますが、現在、その二つから新型コロナウイルスの感染者が出ています。そのうちの一つは、感染者がすでに20人以上と、クラスターが発生している状態。私たちも対策として、キャンプに住む難民の様々な国の言語で情報を行き届かせる、手洗いの励行、人との距離を取ることを徹底しています。

 一番恐れているのが、ギリシャの五つの島にある難民キャンプでの感染です。収容人数2500人のところに1万人以上入れている場所もあり、そこで住民が並んでご飯の支給を待つ状態で、ソーシャルディスタンスを取るというのは無理な話です。水も足りず、共同トイレは壊れていたり、臭かったりと衛生環境も最悪です。感染が起きたら爆発的に広がるでしょうし、医療体制も整っていません。人工呼吸器や人工心肺装置なんてほとんどない。万が一感染した場合、回復できるかどうかは、個人の治癒能力に頼るしかありません。

 現在、キャンプのほとんどが閉鎖していて、国連もNGOもアクセスが制限されています。軟禁状態で、元々メンタルヘルスがギリギリの状態のところにフラストレーションがたまり、暴動が起き始めています。まだ小競り合い程度のようですが、ひどくなると政府の職員への暴行や、放火などが起きます。

 私は難民の教育支援を担当しているので、学校が封鎖された今、何とか教育を途切れさせないように、遠隔で授業を展開しています。親が持っているスマートフォン経由で、宿題用のファイルを送ったり、ポッドキャストで音声だけのレッスンを受けたりできるよう、仕組みを作っているところです。

 難民キャンプへの直接の支援は難しいかもしれません。ただ、自分のことだけではなく、たとえば近所にお年寄りがいたらちょっと気にかける、自分の周りにいる誰かのために動く、そういう姿勢が支援の第一歩になるのではないでしょうか。

(構成/編集部・大川恵実)

※AERA 2020年5月4日-11日号