篠原涼子演じる“伝説のスーパーハケン”大前春子が13年ぶりに復活することで話題の日本テレビ系ドラマ『ハケンの品格』。その最終話が5日、放送された。


第6話から描かれたAI vs 人間の対決はどうなるのか。初の派遣切りを受ける春子の運命は。そして気になる、春子をめぐる里中・東海林の恋の行方は...?(以下最終話ネタバレあり)



真剣な眼差しで春子に「公私ともに僕のパートナーになってください」と伝えた里中(小泉孝太郎)。目の前で突然行われたプロポーズに、かつて春子にプロポーズをした東海林(大泉洋)は「ぶっこわれちゃったのか!?だよな!?」と動揺する。


春子も里中のオデコに手を当て、正気を確かめる。ところが、東海林に「プロポーズするのは今じゃない」とたしなめられた里中は「違う違う!これ違うんだよ!」「僕はこれからもずっと大前さんと同じ方向を見て仕事したいと思って」とあわてて訂正。


公私の「公」はビジネスパートナー、「私」は「仕事が終わった後も一緒にご飯行ったりお酒飲んだりして、たわいもない話をして笑ったり、そういう関係が築けたらいいなって」。プロポーズを意味する言葉ではなかったのだ。


最終話で春子を巡る里中と東海林の三角関係にいよいよピリオドが打たれるかと思ったが、恋の進展は特になかった。これには思わず力が抜けてしまったが、こんな肩透かしも実に『ハケンの品格』らしい。


しかし、春子の声はどこかうかない。13年の付き合いである東海林は春子の変化を見逃さず「とっくり、お前今ガッカリしたろ。おれにはわかる」と指摘。さすがの春子も心を乱したのか「なんでじゃ」とおかしな口調になってしまっていた。

そんな東海林も後にこんなことを言う。AIにリストラ候補者として認定された東海林へ「会社にしがみつくことを考えたほうがいい」と言う春子に対し、「おれのことを切り捨てるような会社、こっちから願い下げだ。でもあんたのことに関しては、話は別だ。賢ちゃん(里中)がプロポーズもどきの言葉を言った時、おれは心底焦った。賢ちゃんにお前を取られるって。13年も経っちまったけど、『おれは本気だったんだ』ってようやく気が付いた」と告げる。


ところが、決定的な言葉を発するタイミングで春子は姿を消している。「おれは本気で、お前のこと...いねえのかよ!」。過去、一緒に仕事をしてきた仲間と別れる辛さを味わっている春子は、仲間として接してくれる東海林や里中を信頼しつつあるからこそ、付かず離れずの関係を保とうとしているのかもしれない。



ラストの展開はまったくの予想外だった。リストラ候補者を救うために里中が挑む起死回生の一手、S&F直営のコンビニ企画で事件が起きるのだ。レジ横で販売する予定のアジフライを、春子が夜中に会社の厨房で揚げていると、春子を不審者と認識した警備用ドローンがつきまとう。しつこいドローンを思わず破壊してしまう春子だったが、このことが問題となり、初めての派遣切りにあってしまう...。


そして1年後、春子は新人演歌歌手になっていた。唐突な変化に度肝を抜かれたが、近(上地雄輔)曰く、演歌歌手は春子の長年の夢だったのだという。AIに頼りっきりのS&Fに嫌気が差した里中は独立し、自分の店をオープン。オープンゲストとして近が店に呼んだのが、演歌歌手の「龍前寺アキ子」こと春子だったのだ。一見ドタバタコメディのような展開に思えなくもないが、このラストで、どこか影のあった春子がようやく救われたようにも思える。


「働くことは生きること」と繰り返し伝えていた春子。はじめ、この言葉には「仕事をするために生きる」という後ろ向きなニュアンスが含まれているようで、どこか息苦しかった。しかし、「生きる」ため、「働く」ため、煩わしい人間関係を切り捨て孤高のスーパーハケンとして過ごしてきた春子が、ついに「夢」を選んだ。ハケンを辞めたのかは劇中で明言されなかったため不明だが、少なくとも楽しく生きる道を選択したことは間違いないだろう。

そして春子は、独立した里中の店で演歌歌手として歌うのだ。春子が里中の“プロポーズもどき”を受けたのかは定かではないが、ハケンと正社員だった春子と里中は「公私ともにパートナー」となり、この先も手を取り合って生きていくのかもしれない。



また、AIと人間との対決は、春子が「人間の脳みそがAIの頭脳に勝てるわけないでしょう。AIはこの先も永久に勝ち続けます」と言い切ることで終止符が打たれる。一年後のS&Fでは、AIを導入した宮部社長(伊東四朗)自身がAIにクビを切られることでオチがついた。


その後が気になる若手メンバーたちも、それぞれの道を歩んでいた。キャリアアップを狙っていた(中村海人)はS&Fに残り、生き生きと職務に励んでいた。そして亜紀(吉谷彩子)と小夏(山本舞香)は、里中が立ち上げた店で正社員に。一方、春子に憧れ“スーパーハケン”を目指していた井手(杉野遥亮)は念願のハケンとなり、やはり里中の店で汗を流していた。選んだ道は異なるが、誰もが笑顔で仕事を楽しんでいる。


AIにできないのは「ムダなこと」と春子は言う。失敗してやけ酒を飲んだり、恋したり失恋したり、ショックで仕事が手につかなくなったりするのは人間だけ。しかし、“お時給ロボット”と揶揄されながらも、東海林や里中のために春子がしてきた行動の数々は、そんな“ムダ”な人が人を想う気持ちによるものだったのではないだろうか。そしてそんなムダを繰り返しながら、人は成長し、魅力を増していく。『ハケンの品格』が私たちに残してくれたのは、それこそが「働くことは生きること」なのだというメッセージだったのかもしれない。


文:山田健史



『ハケンの品格』

<出演者>    篠原涼子 小泉孝太郎 勝地涼 杉野遥亮 吉谷彩子 山本舞香 

中村海人(Travis Japan/ジャニーズJr.)  上地雄輔 塚地武雅(ドランクドラゴン)

大泉洋(特別出演) 伊東四朗

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