首都圏出身の男子学生が多くを占める東京大学。「偏ったクラスターの人間ばかりが集まると、発想が閉じてしまう」。研究室から数多くの起業家を輩出している東大大学院情報学環の暦本純一教授は、人材の偏りがイノベーション(技術革新)の阻害につながることを危惧する。

 東大の発表資料によると、2019年度入試の合格者は37%が東京都内、59%が関東圏の高校出身者だった。東大の「関東地方大学化」は年々顕著になっている。入学者数の女子学生が占める割合は17年度に一時的に20%を上回ったものの、その後再び低迷し、19年度は18%にとどまった。

 世界の主要大学や他の旧帝大と比べても東大の「異常さ」は突出している。

 この事実を東大はどう受け止めているのか。ジェンダー論が専門で、東大の女子学生を増やす取り組みに関わってきた瀬地山角教授は、「都心アッパーミドル家庭の男子だけが集まることで、格差が固定化される恐れがある」と指摘する。東大は官僚や法律家、経営者の養成機関であり、最大の研究者養成機関でもある。「政策立案に関わる人材、広く社会を見渡す必要がある人材を送り出している大学で、性別にこれだけの偏りがあるのは、日本の将来を考えても問題だ」と危惧す

家賃補助支給も不発

 東大はさまざまなバックグラウンドのある学生を集めるため、16年度入試から初の推薦入学制度を導入。推薦できるのは高校1校当たり男女各1人までとするなど、性別の偏りを回避する策を盛り込んだ。17年度からは、自宅からの通学が困難な女子学生を対象に、民間住居を100室程度用意し、月額3万円の家賃補助を支給している。それでも女子学生は増えない。

 地方の優秀な女子学生が地元国立大学の医学部に進む傾向が高まっているとされる。瀬地山教授は「若者たちの地元志向が高まり、東大離れが進んでいるとしたら致し方ない。ただ、女子にその傾向が顕著なのは、女子がいまだに教育投資の対象とみられていない現実があるからではないか」と言う。

 一方、「女子は東大そのものに魅力を感じていないという面もあるのでは」というのは、『ルポ東大女子』などの著書のある教育ジャーナリストのおおたとしまささんだ。「男子は競争社会のトップに立ちたいという意識が根強いが、女子はそんなブランドは必要とせず、シビアに何が学べるか、どんな学生生活を送れるかといった視点で大学を選んでいる」と指摘。「もっとわくわく感を作り、例えばお茶の水女子大と連携協定を結ぶ、といった斬新なことをする必要がある」と話す。

(編集部)