(赤間清広・毎日新聞中国総局記者)
 世界に先駆け、新型コロナウイルスの感染拡大にさらされた中国で、先進的な非接触サービスが次々と実用化されている。

 北京を代表するオフィス街・国貿。高層ビルが建ち並ぶ大通りを、小型の配送車がゆっくりしたスピードで走っていった。中国で200店舗以上を展開するギョーザチェーン店「小恒水餃」が出前用に導入した無人の自動配送車だ。

 開発したのは、2018年創業の北京のベンチャー企業「新石器慧通科技(ネオリックス)」。同社はレベル4の自動運転技術を武器に、主に観光地などを自動で巡回してジュースなどを売る自動販売車を提供してきた。

 それが新型コロナで「非接触」の需要が急増すると各地から新たな注文が次々と舞い込み始めた。深圳には公園内をパトロールする「自動警備車」を納入し、浙江省には団地内の消毒や住民の検温などを行う「自動防疫車」を送り出した。

一気に「開花」

 中国でも自動配送車が公道上を走る際は近くに担当者を配置する必要があるが、公園や団地の敷地内など閉鎖空間であれば完全無人走行が可能だ。「小恒水餃」の自動配送車を担当した新石器の賈小奎氏は「感染予防のためには人と人の接触機会を可能な限り減らす必要がある。自動運転の技術を生かせば、多くの領域で業務が無人化できる」と話す。

 中国では新型コロナ流行前から「無人化」や「非接触サービス」が一つのブームとなっていた。先導役は経済の成熟とともに高騰していく人件費に頭を悩ませていたネット系企業や、新石器のようなハイテクベンチャー。実験的ともいえる店舗やサービスの実用化が進んでいる。

 中国インターネット通販最大手、アリババ集団は18年末、本社を構える浙江省・杭州に、ルームサービスやバーテンダーなどをすべてロボットがこなす菲住布渇(フライズーホテル)を開業。ネット通販2位の京東集団(JDドット・コム)はロボットが調理・配膳を受け持つ無人レストランをオープンし、ドローンや自動運転車による無人配送も一部地域で始まった。こうして蓄積されてきたノウハウが、新型コロナを機に一気に花開いた形だ。

 中国では感染拡大期、国内の病院は患者で埋まり、各地のホテルも感染の疑いのある人の隔離場所と化した。感染拡大の危険が高いこうした施設に投入されたのが、自動走行や配膳技術を生かしたロボットだ。

 ロボットなどを使った「非接触サービス」は人を使った従来のサービスに比べコストが圧倒的に高く、これまでの実験的な取り組みはなかなか社会に広がらなかった。しかし、感染予防という新たな目的が加わったことで使途が一気に拡大。国内需要の高まりが非接触サービスのレベルを一気に押し上げている。新型コロナを機に、中国が非接触サービスのトップランナーに躍り出た。