紙幣印刷機を世界各国に供給

── 国内で紙幣印刷機を製造しているのは、小森だけですね。
持田 戦後間もなくは、紙幣の印刷機メーカーが複数あり、当社もそのうちの1社に過ぎませんでした。しかし、精密な印刷機を安定的に供給できるところは限られ、だんだん会社がなくなってきて、結局、当社が最後まで残ったということなんです。紙幣印刷は、当局が公募して、メーカーに製造方法を教えるというやり方だと偽造を招く恐れがあります。

── 2024年に新紙幣の導入が予定されています。
 一つの紙幣印刷機を作るのにだいたい2年くらいかかり、15年から20年に1度納入するという感じです。紙幣印刷機は20年ぐらい先を見て機械の仕様を決めているので、いま急いで新しい機械を製造するわけではないんです。新紙幣で特需がある、という状況ではありませんね。

── 日本だけでなく、英国のポンド紙幣の印刷にも使われているとは驚きです。
持田 2017年から当社の印刷機が英国の中央銀行に採用されています。当時、ポンド紙幣は旧デザインから新デザインへの切り替わりの時期で、旧デザインの紙幣を当社の印刷機で試し刷りしたところ、鮮明すぎて「偽造と疑われるから鮮明度を落としてくれ」と言われました(笑)。

── 採用された経緯は。
持田 世界の紙幣印刷機は、長年、独KBA社がほぼ独占していました。その中で紙幣の請負印刷の最大手、英デ・ラ・ルー社と協力関係を構築したことが大きかったです。同社は途上国を中心に150カ国以上の紙幣印刷を請け負っています。この会社が当社の印刷機を採用した。そうした実績と信用の積み重ねが英中央銀行の受注にもつながりました。

── 輸出に積極的ですね。
持田 英国のほか、フィリピン、インド、インドネシア、中国にも納めています。国民の生活レベルが上がるにつれて、紙幣印刷量の増加、セキュリティーの向上、国威発揚など、紙幣への要求が高くなるので、世界の紙幣印刷市場は着実に拡大しています。現在、世界の紙幣流通量の85%は、各国が自前で生産していますが、残り15%は民間の印刷会社が各国から請け負っています。

── ライバルのKBAと世界市場を二分しています。
持田 これまで当社は国別で30カ国ぐらいに納入しており、そのほか民間紙幣印刷会社にも納入しているので、合わせると100カ国ぐらいの紙幣は、当社の印刷機で刷ったものです。KBA社とのシェアは、ここ10年の受注台数で50対50ぐらいですね。