「オン・ザ・ミルキー・ロード」の巨匠監督来日、自身のバンドで歌い狂う!?

「オン・ザ・ミルキー・ロード」の巨匠監督来日、自身のバンドで歌い狂う!?

 9年ぶりの最新作「オン・ザ・ミルキー・ロード」が、9月15日より劇場公開される天才監督エミール・クストリッツァ。同作は“イタリアの宝石”モニカ・ベルッチをヒロインに迎え、紛争下で芽生えた恋と逃避行を自身の主演で描いた奇想天外でファンタジックなドラマだ。そして新作のキャンペーンで来日したクストリッツァが、自らが率いるバンド“ザ・ノー・スモーキング・オーケストラ”で9月2日に1日だけのライブを敢行。東京・お台場のZepp 東京に老若男女、幼い子連れの家族まで幅広い層が集まり、満員状態のフロアで踊りまくる狂騒の一夜が実現した。

 ノー・スモーキング・オーケストラが来日したのも9年ぶり。クストリッツァ作品の多くに音楽を提供し、時に出演もしている旧知のメンバーたちが“ウンザ、ウンザ”と名付けた独自のミクスチャー音楽を奏でるスタイルは変わっていない。編成はリズムギター&ボーカルのクストリッツァを筆頭に、バイオリン、アコーディオン、リードギター、サクソフォン、トランペット、ベースにドラムとオッサンばかりの9人。なぜかソビエト連邦の国歌でステージに現れ、曲と曲の間にやたらとヘンリー・マンシーニの「ピンク・パンサーのテーマ」をはさみながら、無国籍なパーティーミュージックを鳴り響かせた。

 そもそもなぜ、2度のカンヌ映画祭パルムドール受賞など華々しい経歴を持つ名監督がバンドをやっているのか?

 ノー・スモーキング・オーケストラの前身は、先代フロントマンだったネレ・カライリチが1980年頃に旧ユーゴスラビアのサラエボで結成したパンクバンド。カライリチと意気投合した若き日のクストリッツァもベーシストとして参加していた時期があり、バンドにとってクストリッツァは、著名な映画人である前に“元バンドメンバー”だったのだ。

 ところが92年にボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が勃発。カライリチらセルビアのベオグラードに移ったメンバーと、サラエボに残ったメンバーに引き裂かれ、それぞれが別々に同じバンド名で活動するようになる。まるでクストリッツァの映画みたいな話である。

 現在のノー・スモーキング・オーケストラは、クストリッツァが「黒猫・白猫」(98)の音楽をカライリチに依頼したことをきっかけに、クストリッツァもメンバーとして正式加入。ジプシー音楽やバルカン半島の民族音楽の色合いを強めたミクスチャーバンドとして再編されたもの。その活動はクストリッツァ自身が監督したドキュメンタリー「SUPER 8(2001)」に記録されおり、クストリッツァの実子でドラマーのストリボルとつかみ合いのケンカをする姿が話題を呼んだ。

 カライリチは心臓疾患からライブ活動からの引退を余儀なくされて、12年頃にバンドから離脱。ストリボルも今回の来日には参加していないが「オン・ザ・ミルキー・ロード」の音楽を担当しており、特に関係が悪くなったわけではない模様。現在は以前からパーカッションを担当していた古参のゾラン・マリヤノビッチがドラムを叩いている。

 現在はボーカルをクストリッツァとバイオリンのデヤン・スパラバロとアコーディオンのゾラン・ミロシェビッチが分担する3人態勢に。いずれも「SUPER 8(2001)」にも登場していたお馴染みの面々だ。女性客ばかりをステージに上げてクストリッツァが超いい加減な振り付けを伝授したり、巨大な弓を持ち出してバイオリンとエレキギターをかき鳴らしたり、観客に「Fuck MTV!」と連呼させてみたり、終始やんちゃなサービス精神が旺盛で踊るのと笑うのに忙しい。

 シェイクスピアをネタにした「Was Romeo Really A Jerk?」のような冗談ソングで盛り上げつつ、「ジプシーのとき」「アンダーグラウンド(1995)」「黒猫・白猫」「ライフ・イズ・ミラクル」といったクストリッツァ作品の曲をはさみ込む。クストリッツァが映画のタイトルを告げる度に客席から歓喜の声が上がる。ブラスバンドがメインだった「アンダーグラウンド(1995)」のフレーズを、スパラバロが超絶技巧の高速バイオリンで弾いてみせる一幕は圧巻だった。

 さらに“ラテンの王様”ティト・プエンテにオマージュを捧げたり、ピンク・フロイドの「クレイジー・ダイヤモンド」の一節をブッ込んだり、古今東西の音楽への愛情をまき散らしながら怒涛(どとう)の2時間が終了。彼らのライブで味わえるゴッタ煮の興奮は、クストリッツァ監督作ともちろん共通している。「オン・ザ・ミルキー・ロード」でも音楽に合わせて飲めや歌えやの大宴会が繰り広げられ、我が物顔の動物たちが闊歩(かっぽ)し、クストリッツァ本人がヘビやクマとも交流してみせるカオス状態。どうかライブを見た人も見逃がした人もぜひ劇場に足を運んでいただきたい。(取材・村山章)

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