1月16日に『科捜研の女』(テレビ朝日系)の第26話が放送された。

科捜研メンバーの初詣で幕を開けた冬シーズン。榊マリコ(沢口靖子)が引いたおみくじは凶だった。しかし、その内容は「待ち人 来る」。というか、今回のタイトルが「待ち人、来る」の時点で、土門薫(内藤剛志)の帰還はほぼ判明していたようなものだった。


新風を呼び込んだ堀切の退場が惜しい


土門の復帰は嬉しいが、サイバー犯罪対策課・堀切徹(中村俊介)の離脱は少し惜しく感じてしまう。正面突破ばかりだったこれまでの刑事と違い、チェスのように相手を追い詰める彼の手法は『科捜研の女』の新境地だった。ストーカー被害に遭った女性のために同性のマリコを連れていき、被害女性が襲われる危険性を考慮し、夫に尋問しようとする蒲原勇樹(石井一彰)を制止したり。土門のような直情型ではない堀切が新鮮に映ったのだ。
ドラマに新風を呼び込んだだけでない。タイプが違う堀切&蒲原コンビの相性も良かった。「広域サイバー捜査係」という新部署も時代を反映していたし。

そんな相手に寄り添うタイプの堀切が、捜査対象にGPSを仕掛ける“正義の暴走”を見せた。土門が戻ってくる理由を作るためとは言え、違法捜査に手を染める唐突なキャラ変にはこけた。そんな、強引な……。
それほど堀切は惜しいキャラクターだったのだ。今回も主人公かと思うほど存在感を放っていたし、これで退場となるのはもったいない。今後、スペシャルか何かで是非再登場してほしいと思わせる男である。

それか、警察を辞めてルポライターに転職し、趣味で探偵を始めるのもいい。浅見光彦という名前で……。

土門の不在でマリコ&蒲原が成長


堀切の登場と土門の不在によってもたらされたのは、マリコと蒲原の成長だった。

まず、マリコについて。おみくじで凶を引いても「標準的なおみくじに凶は10パーセント入ってるから問題ない」と言うほど理論派のマリコが、DV被害者の感情に寄り添う姿は珍しかった。また、雨の中張り込みをする蒲原にマリコが傘を差したシーンは、彼女が“守られる側”から“若手を見守る立場”にステップアップさせたことを感じさせた。

蒲原も自分と温度差のある堀切に触れることで一段と成長したはずだ。DVに関する尋問を堀切に制止された蒲原は納得する。しかし、彼はこうも言っていた。
「堀切さんが言ったことは間違ってません。ですが、自分は捜査線上に浮上した被疑者は自分の目で見て、クロだったら徹底的に追い詰める。そういうやり方を土門さんに教わってきたから……」
土門の名前を出す寸前、チラッとマリコのほうを見た蒲原。どもマリの2人を最も近い場所で見てきたからこそ「土門」の名前を出すことにためらっているのが、たまらないのだ。

はじめから土門は復帰すると思っていた


というわけで、予想通りに土門が戻ってきた。ぶっちゃけ、はじめからそうなると思っていた。いや、それにしたって復帰が早すぎるが。だって、たった2回休んだだけである。もう少し引っ張ると思っていたのに……。

はっきり言って、我々は裏事情もお見通しだ。内藤剛志が『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)の撮影で忙しくなり、そっちが終わったから戻ってきた感が凄い。これから土門に何かあったら、「内藤剛志が忙しくなった」と思えということ。それにしても、たった2回休むためだけに「警察学校に異動」というストーリーを作ったのは大仰というか何というか……。

振り返ると、今シリーズは匂わせの度が過ぎていると思う。
・風丘早月(若村麻由美)が誘拐されて殉職するかも→ケロッと生還(16話)
・蒲原が爆液を浴びて殉職するかも→何も起こらなかった(17話)
・土門卒業するかも→組織の再編で一課に復帰(今ココ)

しかも、今回の土門の件は、後継者的な存在(堀切)が登場→部下(蒲原)も卒業して「刑事に異動は付きもの」と印象づける→新設部署の予定がポシャる、という物凄い動線を辿っている。そんな、匂わせのテクニックばかり上達しないでも……。

筆者は24話のレビューで、「さよなら月亭方正」ばりに卒業詐欺を繰り返す土門を「月亭土門」と呼んだ。今考えると、あながち的外れじゃない。そして、この26話のエピソードには「土門ちゃんは科捜研をやめへんで〜」というサブタイトルを送りたいと思う。

土門を「待ち人」と認めたマリコ


土門が帰ってくると知ったときのマリコの嬉しそうな顔ったらなかった。

「組織が再編されたせいで一課の刑事が足りなくなり、所轄署や他の部署に行ってたベテランの刑事が何人も一課に呼び戻されてるみたいですよ。そのおかげで……」(蒲原)
「おかげで」から先は言わず「わかりますよね?」とマリコに視線を送る蒲原が憎い。その報告を受け、ルンルンで掲示板を見に行くマリコがまた可愛すぎるのだ。

「『待ち人 来る』『瓢箪から駒の出るが如く』、当たった……!」(マリコ)
マリコがナチュラルに土門のことを「待ち人」と認めているのにキュンとくる。非科学的なことは信じないはずのマリコが、おみくじという非科学的なものを信じるほど土門復帰を待ち望んでいたのだ。

オープニングのおみくじが土門復帰の伏線だったところが、また新年らしかった。土門と蒲原が戻り、盤石の陣容で『科捜研の女』は再始動する。
(寺西ジャジューカ)

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中