日本では何か体の調子がおかしければ病院や診療所でお医者さんに診てもらい、薬を飲んで治療するということがあたり前のようにできていますが、これは公的医療保険制度に支えられているためです。しかし、少子高齢化により制度の支え手が減り、高齢者の医療費が膨らむ中、この医療制度を維持するのは年々困難になってきています。   「全世代型社会保障」で医療制度改革が議論されていますが、私たちの生活にどんな影響があるのか見てみましょう。  

日本での医療保険は「国民皆保険制度」! 海外はどうなっている?

日本での公的医療保険制度には、会社員が加入する健康保険、自営業者やサラリーマンOBなどが加入する国民健康保険、75歳以上の方が加入する後期高齢者医療保険があります。すべての国民がなんらかの医療保険制度に加入が義務付けられてしていますので、「国民皆保険制度」といわれています。
 
日本の医療保険制度は、保険証があれば、どの医療機関でも自由に受診できる「フリーアクセス」が特徴で、患者は基本的にかかった医療費の1割から3割を負担するだけで良いのですが、海外の医療保険制度は事情が異なります。アメリカは国民全体を対象とする公的な医療保険制度が存在せず、現役世代は民間保険が中心。医療費はかなり高額になります。
 
フランスやドイツは日本と同じように「社会保険方式」の医療保険制度ですが、イギリスは国内に住所を持つ人を対象にした「税方式」。窓口での料金負担はありませんが、フリーアクセスではなく、かかりつけ医の制度が厳しく、紹介状がないと専門医を受診できないということです。
 

「全世代型社会保障」の医療制度改革の焦点は?

医療保険制度を維持していくため、2020年1月20日、「全世代型社会保障」についての議論が始まりました。この議論の焦点は2つあります。
 
1つ目は、75歳以上の後期高齢者の医療費の自己負担を、一定額以上の所得がある場合に1割負担から2割負担に引き上げるというというものです。医療費の負担割合を2割とする所得を、いくらにするかが問題となっています。
 
すでに現状で、現役並みの所得がある人は3割負担となっています。現役並み所得とは、例えば夫婦2人の世帯では2人を合わせた年収が520万円以上、被保険者が1人の場合は383万円以上です。2割負担となる年収を低く設定すれば、それだけ現役世代の保険料負担が少なくなりますので、議論の行方が見守られています。
 
2つ目の焦点は、紹介状なしで大病院を受診した際に、特別料金を徴収する制度を拡大するというものです。現状は、高度な医療を提供する「特定機能病院」や、許可病床が400床以上ある地域医療支援病院を紹介状なしで受診した場合、初診では5000円(歯科の場合3000円)、再診では2500円(歯科の場合1500円)以上が徴収されます。
 
このような病院は、重症患者や先端医療が必要な患者に適切医療を行うためにあるので、日常的な病気や軽いケガは、まず「かかりつけ」の医療機関で受診することが求められているということです。
 
今後は、特別料金を徴収する対象となる病院を、病床400床以上から200床以上に広げることが検討されているほか、徴収する特別料金も1000円以上引き上げることが検討されています。「フリーアクセス」をある程度制限しようとする動きです。
 

医療保険制度を維持するためには

公的医療保険制度を維持していくためには、現役世代だけではなく高齢者も相応の負担をすることが求められています。また、国民全体が「かかりつけ医」をもって、適切な医療を受診すること等が求められているのです。
 
いつでも高度な医療を受けることができる日本の医療制度を維持していくためには、一人ひとりが真剣に医療機関の利用について考えなくてはいけない時期にきているのではないでしょうか。
 
執筆者:福島佳奈美
【保有資格】CFP(R)・1級ファイナンシャルプランニング技能士・DC(確定拠出年金)アドバイザー

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