夫が亡くなったとき、自宅を相続した妻の金銭の相続分が少なくなって生活が苦しくなる。この問題を解決するために、残された配偶者が死亡するまで住み続ける権利を設定できるようにしたのが配偶者居住権です。   所有権を相続するより評価が低くなりますので、配偶者は金銭を多く取得することができるのですが、実際にはいくらになるのでしょうか。  

居住期間

配偶者居住権の期間は、原則死亡するまでです(期間を指定することも可)。人が死亡する時期は分かりませんが、相続時点で配偶者居住権評価額を計算しなければなりませんので、平均余命を居住期間として計算します。
 
計算上の居住期間(平均余命)と死亡するまでの期間は一致しませんが、配偶者居住権は配偶者の死亡により終了となります。
 
主な年齢の平均余命(抜粋)
※厚生労働省 「平成30年簡易生命表」より筆者が作成

将来価格×現価係数=現在価格

配偶者居住権が設定されると、所有権は配偶者居住権付き所有権になります。そして、配偶者居住権が無くなると完全な所有権になります。
 
この将来の所有権評価額を法定利息(3%)で現在価格に調整した価格が、配偶者居住権の付着した所有権の評価額となります。現在の自宅評価額と所有権評価額の差額が配偶者居住権評価額です。
 
年利3%複利の現価係数抜粋

評価額の変動

(1)土地の価格は変動しない

 自宅は、土地と建物でそれぞれ評価しますが、土地は価格が変動しないものとして計算します。

(2)建物は経年劣化する

建物は、経年劣化しますのでその分評価額は下がっていきます。減価償却を考えるときには、木造建物の耐用年数は22年で計算しますが、配偶者居住権を計算するときには、1.5倍の33年で計算します。耐用年数を経過した場合には、マイナスにはならず0となります。
 
【配偶者居住権評価額のイメージ】
【計算例】

建物築年数12年 建物1000万円 土地2000万円 配偶者平均余命10年の場合
 居住権終了時の建物評価額 1000万円−(1000万円×10年/21年)=524万円
 居住権終了時の所有権価格 建物524万円+土地2000万円=2524万円
 現在価格に換算  所有権=2524万円×0.7441=1878万円
配偶者居住権価額=1000万円+2000万円−1878万円=1122万円
 

配偶者居住権は必要?

配偶者居住権が生まれた最大の理由は、冒頭で述べたように自宅以外の財産を取得できるようにするというものです。法定相続分で遺産を分割することを前提に考えた制度です。
 
しかし、遺言によっても遺産分割協議でも配偶者に手厚く財産を取得させることは可能です。家族関係が良好であれば、残された配偶者が安心して暮らせるように財産を分配するでしょう。
 
例えば、自宅は管理しやすいように子が相続し、配偶者が希望する間は住んでもらい、施設などに入って空き家になったら所有者である子が処分するということが考えられます。
 
配偶者居住権があると、空き家になっても居住期間が終わるまで所有者は処分ができません。

もう1つの効果

遺言では、遺言者の相続のみ取得者を指定できます。自分の死亡後、まずは自宅を妻に相続させ、妻の死亡後に次女に相続させたいとしても、できません。
 
しかし、配偶者居住権付きの所有権を次女に遺贈する旨の遺言がなされた場合は、これに近い効果が得られます。この点では、遺言者の選択の幅が広がったといえるでしょう。

まとめ

法定相続分や遺留分を主張する相続人がいる場合には、配偶者居住権は残された配偶者の生活を守る効果が期待されます。
 
しかし、これにより実家が空き家になる可能性もあります。推定相続人の状況などを考慮し、配偶者居住権以外の方法も検討してください。
 
 ・遺言で子に相続させ、配偶者が住み続ける
 ・遺言で子に「配偶者が住み続ける」負担付きの遺贈をする
 ・民事信託で配偶者を受益者に指定して居住を確保する
など、配偶者の終の棲家を守りましょう。
 
[出典]


 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士

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