【フィスコ・コラム】「夏枯れ=波乱」の8月相場

8月は一般に「夏枯れ相場」といわれます。しかし、「ニクソン・ショック」をはじめ歴史的なイベントが8月に起きたケースも多々あり、閑散であるがゆえ波乱につながりやすく警戒が必要です。今年は米朝間の緊張が高まっており、ドル・円は心理的節目の110円を割り込みました。目先はどのようなシナリオが待ち受けているのでしょうか。





8月に入ってからのドル・円は、大方の市場参加者が想定するレンジ110-115円の下限を短期的に割り込んでも、終値ベースでは110円台を回復し、市場に安心感を与えていました。値動きは110-111円の狭いレンジ内にとどまり、7日のNY市場では110円71銭-110円91銭、高安わずか21銭の閑散ぶりでした。お騒がせのトランプ米大統領も夏休みに入ったことだし、ジャクソン・ホール(米ワイオミング州)で各国の金融当局者が一同に会して行われる年次シンポジウムまでは夏枯れ相場・・・そんなムードが広がっていました。





ところが、その静寂は突然打ち破られました。トランプ大統領は、ミサイル発射で米国への挑発をし続ける北朝鮮に対し、「世界が見たこともないような炎と怒りに直面する」などと軍事攻撃を示唆。一方、北朝鮮はメディアを通じ「グアム周辺地域を『火星12』(中長距離弾道ミサイル)で包囲射撃する作戦計画を慎重に検討している」と応じます。「グアム」と具体的な地名を挙げて攻撃の意思を示したことで一気に緊張が高まり、リスク回避的な円買いでドルは110円を明確に下抜けました。



振り返ってみると、8月は市場を震撼させる歴史的なイベントが発生しています。主な例として、ドルと金の交換を停止した「ニクソン・ショック」(1971年)、「イラクのクウェート侵攻」(1990年)、「ロシア通貨危機」(1998年)などが挙げられます。記憶に新しいところでは、サブプライム問題の前哨戦となった「パリバ・ショック」(2007年)もそうでしょう。さらに、中国の金融当局が3日連続して人民元の対ドル基準値を引き下げ、中国経済への懸念から世界同時株安が続いた「人民元ショック」は2年前の8月でした。





こうした事例は、現在でいえばリスク回避的な円買いを誘発する要因となります。他にも円に上昇圧力がかかりやすい理由として、米国債の大量入札や償還のほか、日本企業の9月末決算に備えたリパトリ(本国還流)などが考えられます。国内投資家の夏休みがお盆の時期に集中するので、ドル安局面でもその時期には買い支え切れないという現実もあるでしょう。いずれにしても、日本の場合は一般的なネガティブ要因である円高に振れる方が市場参加者の忙しさは増すので、あまりいい思い出は浮かびません。





今年の8月後半は、米朝関係の対立から目が離せません。トランプ大統領は北朝鮮に対して簡単に軍事攻撃に踏み切ることなどしないとは思いますが、金正恩朝鮮労働党委員長と張り合うように力を誇示する姿には不安を覚えます。一方、ジャクソンホールでの会合では、ドラギ欧州中銀(ECB)総裁が予想外に弱気な見解を示すと、市場センチメントが悪化して円高に振れやすくなるでしょう。波乱に備え、そんなシナリオを想定した方がいいかもしれません。



(吉池 威)

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