スウェーデンの憂うつ【フィスコ・コラム】

東アジアにおける朝鮮半島有事への懸念と同様に、バルト海ではロシアの軍事活動に周辺国は警戒を強めています。特に、スウェーデンでは北大西洋条約機構(NATO)加盟の機運が高まっており、来年の総選挙では争点化が見込まれます。通貨クローナにはどのような影響があるでしょうか。





ここ数年のロシアによるバルト海での軍事活動は冷戦後最大といわれるほど活発化しており、バルト3国や北欧諸国はロシアによる攻撃を想定した警備を強化しています。ロシアは今年7月にバルト海で中国との合同演習を行った後、その2カ月後にはラトビアなどを睥睨(へいげい)した軍事演習を決行。2014年2月のウクライナ国境周辺での大規模軍事演習の直後、クリミア半島を併合したことが想起されました。





それと前後して行われたスウェーデンの軍事演習「オーロラ17」は、この20年あまりではかなり入念に行われました。スウェーデン政府は自衛力を高める目的で軍事予算を増額するほか、2010年に廃止した徴兵制を来年から復活させる方針です。スウェーデンは現在、NATOには加盟せず中立を維持していますが、今年1月の世論調査では、50%近くが加盟に賛成で、反対の39%を上回りました。





NATO加盟が来年9月の総選挙で争点となることは必至とみられます。現在の社会民主党・緑の党の連立政権は、ロシアを刺激しない一方でアメリカとは距離を置きたいとの思惑から、非加盟のまま軍事演習に参加する独自路線を継続する方針です。他方、民主党を除く全野党はNATO加盟を訴えています。プーチン政権発足後、旧ソ連構成国や東欧の周辺国をNATOから引き離そうとするロシアの動きをみれば、自然な流れと言えます。





NATO加盟のメリットは、当事国への攻撃はアメリカをはじめ加盟国への攻撃とみなされるため、抑止力になることです。反面、加盟各国は防衛費を国内総生産(GDP)の2%にするとの目標を強いられることになります。アメリカのトランプ大統領はGDP比2%では不足として各国の防衛費の上積みを主張しており、一段の財政負担がのしかかっています。スウェーデンの場合、2%でも現在の2倍の防衛支出が求められる計算になります。





財政構造の見直しとなれば、景気にも影響してきます。スウェーデン経済は足元で2-4%の成長を維持していますが、経常黒字国のため通貨に上昇圧力がかかりやすく、リクスバンク(中央銀行)はマイナス金利を導入するなどクローナ高の回避策を堅持しています。10月26日に開催した定例会合では、政策金利を-0.5%に据え置くとともに、2018年半ばまで引き上げない方針を示しました。





仮にNATO加盟を主張する野党が政権を奪還した場合、ロシアからの攻撃を封じる効果を見込んだ安心感からクローナ高に振れるのか、それとも財政支出拡大を嫌気したクローナ安に向かうのか、シナリオは定まりません。ヨーロッパではトランプ政権の安全保障に対する考え方に不安が広がり、NATOに代わるヨーロッパ独自の新たな防衛協力の枠組みづくりも取りざたされており、なお目が離せません。



「吉池 威」

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