ハイアス Research Memo(6):「富の概念」を変える、「売買手法」を変える、「業界」を変える

■中期経営計画



ハイアス・アンド・カンパニー<6192>は、2020年4月期までの中期経営計画を発表した。同社の企業理念としては、「HyAS&Co. Inc.の使命は、個人が住宅不動産を納得し安心して取得(購入)、居住(運用)、住替(売却)できる環境をつくることです。住宅取得が個人の資産形成に直結する社会の実現、それが我々のテーマです。」としており、日本の不動産、特に欧米と比較して年月の経過とともに減衰する家屋の価値を向上させることで個人の生活や社会を豊かにするという壮大な構想を掲げている。最終的な実現までにはある程度の長い年月を要するだろうが、今回の中期経営計画は、2020年までのスパンでそれを具体化させていく実行計画といったものである。そこでは、「『富の概念』を変える、『売買手法』を変える、『業界』を変える」として、住宅業界における「社会インフラの整備」が不可欠であるとしている。1) 不動産(土地・建物)の評価の仕組み、2) 税制・相続の仕組み(&適度なインフレーション)、3) 住宅の品質基準、4) 2次流通(売買)のマーケットプレイス、5) 過去の新築・改築情報のデータベース化、6) 住宅資産に関する知識形成・教育の6項目について、変革を起こそうとしている。



もちろん、同社のみの努力ですべてが達成できることではないが、不動産業界におけるコンサルティング事業に特化してきたという同社の立ち位置は、政府・金融機関・各種R&Dなどへの提言・意見交換や、業界団体、会員企業や一般消費者への影響力という点で、他の不動産事業者よりも優位性が発揮しやすいポジションにあると言える。



同社が手掛ける事業領域については、既存のパッケージソリューションを中心としたコンサルティング事業が主力であり、今後ともそれは変わらないだろう。主力の「R+house」は、デザイン、性能、コストで競争優位性があり、受注数・住宅着工数は順調な伸びを今後とも続けるものと見られる。また、より安価で高い機能性とデザイン性のADM(アーキテクチャル・デザイナーズ・マーケット)も2016年4月期の発売開始以降好評のようである。さらに、ansで行う住宅購入相談やK−コンサルティングで行う不動産相続相談などで、不動産関係の様々な現場情報をいち早く入手して、商品・サービス開発や各種施策につなげられるというところも同社の強みである。



同社の中期経営計画では具体的な数値目標は公表していないが、売上高ベースで2020年4月期に100億円程度を目標としているものと思われる。その達成のためには、既存のソリューションだけでなく、新規商品・サービスの開発・投入が不可欠であるが、同社は不動産市場で「今後起こりうる大きな変革」として、住宅版クラウドファンディングと流通・未流通の不動産情報プラットフォームというものを挙げている。



住宅版クラウドファンディングについては、住宅の資産価値向上という目標の中で進めている、資金調達方法の検証の一環という位置づけである。同社は、その強みとする会員ネットワークにより、全国の地場情報へのアクセスが可能である。また、不動産特定共同事業法の改正※により外部環境が整備されたことも追い風となり、住宅等へのクラウドファンディングの活用方法の検証を進めている。



※複数の投資家からの出資により不動産を取得し、不動産を運営して得た収益を投資家に分配する事業について定めた法規で、2017年3月3日付で、小規模な不動産特定共同事業にかかる特例を創設、クラウドファンディングに対応するための環境整備、などの改正案が閣議決定された。





また、流通・未流通の不動産情報プラットフォームについては、同社は現在開発中のAMS(エージェントマスターサービス)を挙げている。これは、海外では既に実用化されているもので、米国のZillow Group Inc.を例示している。物件情報・ハザード情報・売買実績情報などが一元的に閲覧できる住宅情報データベースの構築・提供である。個人情報の取扱いは注意が必要であるが、大量の物件情報とその関係情報の蓄積により、不動産情報のプラットフォームとして進展が大いに期待できる。



同社は住宅業界を改革する上で、従来の世界基準の「デザイン」と「性能」を兼ね備えた住宅の質の改革と同時に、部材の流通、販売経路の仕組みについて改革を推進するとしている。部材の流通とは、一般の不動産部材の流通は、メーカーから商社、一次問屋、二次問屋など多層階の流通経路を経なければならない。それに対し同社の場合は、Web受発注システムを活用し、メーカーから現場への直送により、図面なども含め必要な場面で必要な部材を低コストで提供するという仕組みである。



販売経路については、従来の住宅売買では、ユーザーは多数の不動産業者の中からいずれかの業者を選定しなければならず、専門的な知識がない状態で自分に最適の業者選定が困難であった。しかし、同社の場合は、業者フリーの相談窓口ansによって、エンドユーザーが最適な判断をできるような仕組みを構築している。



同社の事業内容は、コンサルティング事業が中核であることは中長期的にも変わらないだろうが、前述した今後の不動産業界の変革に伴い、従来のコンサルティング事業にとどまらず、色々な周辺マーケットへ広がる可能性を秘めている。中期経営計画の目標達成のためには、M&Aも積極的に展開していくとのことであり、分野としては2017年4月期子会社化したアール・プラス・マテリアルのように、建築資材などのコストダウンが目的となるケースが多くなるもようであるが、様々な事業連携も含めれば、領域は幅広くあり得るだろう。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)

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