日本トリム Research Memo(5):電解水透析で患者のQOL向上に有意な結果が見られた

■事業概要



d) 東北大学と電解水透析による患者のQOL向上に関する共同論文

9月に、米国科学誌PLOS ONEに、東北大学 慢性腎臓病透析治療共同研究部門 中山昌明(なかやままさあき)特任教授と共同論文「慢性血液透析患者における血液透析中の分子状水素(H2)供与の臨調効果の可能性:観察調査12ヶ月目の中間解析(和訳)」を発表した。日本の血液透析の質は、世界で高評価を得ているものの、透析患者の主な死因である脳心血管病や感染症はいまだに抑制できていない。透析患者に見られる不調は、酸化ストレスと炎症の亢進が関わっている。近年の研究で水素ガス(H2)が抗酸化性を有する事実が明らかにされており、日本トリム<6788>は水素ガスを含む透析液を供給する新しい血液透析「電解水透析」を開発した。今回の研究は、7施設の透析患者262名(通常透析が122名、電解水透析が140名、いずれも通院)を対象とし、12ヶ月間連続して治療と並行して前向き観察調査を行い、患者の身体所見及び各種臨床検査、服薬歴、患者の自覚症状に関するアンケートなどのデータを集め、比較解析した。その結果、通常透析患者と電解水透析患者の間で、統計学的に有意に降圧薬の投与量の減少、重度な透析疲労及びかゆみ症状の抑制がみられ、電解水透析を選択することで透析患者のQOL(生活の質)向上に寄与する臨床効果が示唆された。先進医療の電解水透析は、患者の延命だけでなくQOLの向上を伴うため、病院経営の差別化要因となる。同社が参加している中国の病院でも導入される。



e) 今秋より須崎市500世帯を対象に電解水素水に関する臨床及び疫学調査を開始

臨床及び疫学調査を、高知県須崎市、高知大学医学部と共同研究を行う。2017年秋より開始する予定の共同事業に対して、須崎市議会は事業費に関する予算を承認している。また、「健康をキーワードとした地方創生事業」として国の地方創生推進交付金にも応募しており、承認されれば事業費の2分の1が補助される。市内の500世帯が、同社の電解水素水整水器を使用して日常的に電解水素水を飲用する。生活習慣病予防や健康増進に与える影響、医療費を調査・研究する。高知大学医学部と協力して、利用者の血液や健診データを収集する。



(3) ウォーターヘルスケア事業

ウォーターヘルスケア事業の売上高は趨勢的に拡大傾向にある。2016年5月に高知・南国工場の年産能力を従来の10万台から15万台に引き上げた。生産ラインを増やすものの、大型設備などの導入が不要なことから、多額の設備投資額は不要だった。2017年3月期は、整水器の増収を見込んでいたが、水素水に対する各種報道により下期に販売が失速した。ただし、カートリッジの売上高は増勢を維持し、同事業の売上高利益率は20%超の高水準を保った。



a) 圧倒的なマーケットシェア

整水器市場における同社の2015年度のマーケットシェアは64.5%である。3年前の調査と比べると、同社シェアは拡大した。



電解水素水整水器に関して、同社は米国、カナダ、ロシアや韓国を含む先進10ヶ国で特許を取得・申請中である。水道水中に含まれるカルシウムなどが電極に付着することで電解能力を低下させる現象を防ぐ、ダブル・オートチェンジ・クロスライン方式が同社独自技術となる。整水器の電解槽の寿命を延ばし、長期間にわたって安定的して電解能力を発揮できるため、同社製品の優位性になっている。



b) 販売チャネル

2017年3月期における整水器の販売チャネル別売上高(9,127百万円)は、直販のDS(ダイレクトセールス)事業部が4,437百万円(整水器売上高全体の48.6%)、既存顧客からの紹介によるHS(ホームセールス)事業部が1,881百万円(同20.6%)、百貨店やスポーツクラブなどの催事場で販売するSS(ストアセールス)事業部が670百万円(同7.3%)、大手電機メーカーなどに供給する卸・OEMが1839百万円(同20.1%)、業務部(アフター)が297百万円(同3.3%)であった。



直販は、企業などに出向き、社員向けに説明会を開いて販売する職域販売になる。販売拠点を順次拡大してきており、現在は全国28拠点のネットワークを構築している。1人当たりの販売台数や1説明会当たりの販売台数等の販売効率を重視している。



卸・OEMは、2016年3月期の下期に健康や美容関連2社の新規大口案件がスタートして、順調に拡大した。同社が、長年にわたって電解水素水整水器のトップメーカーであり、科学的アプローチにより物性解明の研究やエビデンスの積み上げをしてきたことが、OEM先から選ばれる要因となっている。



c) 健康経営

従来の職域販売は、職場において従業員に販売するBtoCビジネスになる。ここにきて、企業の「健康経営」に対する関心が高まったことから、企業を営業対象とするBtoBビジネスを強化する。2017年3月期より「健康経営」をテーマに、法人向け営業を精力的に実施する。同社は、「ウォーターヘルスケアという、新習慣。」という考え方を推進している。ガロンボトルを導入しているオフィスに対し、電解水素水整水器は胃腸症状改善の効果が認められている点をアピールする。電解水素水の常飲は、他の健康法に比べ習慣化しやすく、毎日の飲用時に健康への意識が働く。導入企業では、健康意識の高まりが定期健康診断などの受診率向上に寄与することも視野に入れている。



出勤はするものの、体調不良で生産性が上がらず、業務効率が悪化する軽症損害(プレゼンティーズム)の原因は、疲れ、肩こり、腰痛、胃もたれ、胃痛、食欲不振、二日酔い、眼精疲労、頭痛、高血圧、高血糖、花粉症、アトピー、神経痛、便秘などが挙げられる。米国ダウ・ケミカルの産業医による調査では、軽症損害による生産性ロスは13%と出た。軽症損害対策を行うことは、収益改善にもつながる。従業員の健康管理・健康づくりの推進は、単に医療費節減にとどまらず、生産性や創造性の向上、企業イメージの向上、優秀な人材確保などの多くのメリットを生む。



カーディーラーなどは、各店舗に設置するため、一度に40〜70台の導入実績がある。同社は、横展開をすることで、市場を広げると同時に、導入された事業所に勤務する従業員が自宅に購入することも期待している。



経済産業省と日本健康会議は、2017年度より「健康経営優良法人〜ホワイト500〜」の認定を開始した。大規模法人部門では同社を含む235社が認定された。電解水素水を常飲する同社従業員は、1人当たり月間平均医療費が加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)の全国平均と比べると6割程度と少ない。



d) カートリッジの売上高

浄水カートリッジは、使用状況にもよるが、通常年1回交換されるため、整水器の稼働台数の増加に応じて、安定した伸長が見込めるストックビジネスになる。2017年3月期のカートリッジの売上高は3,885百万円と前期比9.9%伸びた。同期はマスコミによる水素水に関する一連の報道の影響により、フロービジネスの整水器売上高は前期比7.2%減少したものの、カートリッジ売上高は増勢を保ち、同社製品に対するカスタマーロイヤリティーの高さを物語っている。カートリッジの整水器売上高に対する比率は42.6%、総売上高比でも25.5%になった。OEM供給した整水器の交換にも、同社のカートリッジが使用される。第三者による「互換」カートリッジに対しても対策済みである。



整水器の市場普及率が現在の6%程度から20%に高まり、1,000万台に達した時点で、同社は累計販売台数300万台の達成を目指している。カートリッジ交換率70%を前提とすると、安定収益であるカートリッジの年商は約200億円となる。



e) 海外子会社 アジア市場の開拓

家庭用電解水素水整水器の国内市場で圧倒的なシェアを持つがゆえに、アジアにおいて新規市場の開拓をする成長戦略を取っている。現在、中国、インドネシア、台湾、韓国に拠点を持つ。売上高が公表されているのは中国とインドネシアの2社になる。2017年3月期の売上高は、中国が74百万円、前期比15.9%減となったが、インドネシアでのボトリング事業が708百万円、同58.0%増と大きく伸びた。両子会社を合わせた売上構成比は5.1%へ高まった。



インドネシアのSinar Mas Groupとの合弁会社「PT. SUPER WAHANA TEHNO」は、2006年からペットボトル及びガロンウォーターの製造販売に携わっている。アルファマートやインドマートなど約24,000店舗に向けた全国展開を進めている。インドネシア最大の都市ジャカルタを中心とするジャワ島西部に加え、第2の都市スラバヤを擁する東部でも本格展開を開始した。中間所得層の増加により、ボトルウォーターの市場が拡大していることから、2016年11月に委託生産により生産能力をペットボトルで2倍、ガロンで5倍に拡大した。今後も高成長が続くとみている。



今後は、ベトナムなどへの新規市場開拓を続ける。



(4) 農業分野 次世代型大型施設園芸施設に納入

農業分野では、電解水素水による高品質・高付加価値農業の実現を目指している。電解水素水を植物に散布や潅水することにより、作物の高品質化や収穫量増加を図る。植物工場への応用も進めている。2018年3月期の農業分野の予想売上高は40百万円と少額だが、将来が楽しみな分野である。



2015年7月に、高知県、南国市、JA南国市、高知大学と同社の5者で「還元野菜プロジェクト」推進連携協定を締結し、産官学協働で実証、普及を推進している。「還元野菜」のブランディングも進める。同協定による取り組みは、農林水産省補助事業「農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」に採択され、補助金が交付されることとなった。一方、2016年4月から高知県の補助事業「環境制御技術普及促進事業」の対象に同社の農業用整水器が追加され、要件を満たす対象者に導入費用の3分の1が補助されることとなった。同時に、県内の市からも最大3分の1の補助が出るため、農業従事者の負担は3分の1で済む。他県においても、農業用整水器の設置、検証を進め、普及拡大に取り組む。



2017年2月に、344百万円をかけた園芸用大型施設が竣工し、次世代型施設園芸での「還元野菜」の栽培が開始された。建設費は、JA南国市、高知県、南国市が負担した。同施設は、農業生産物の輸出においてアメリカに次ぐ世界第2位で、ハイテクを駆使する先進的な農業を行うオランダの次世代ハウスを採用している。70アール、軒高5.5メートルのハウスは、温度、湿度に加え二酸化炭素(CO2)濃度をコンピュータで管理する環境制御技術を備えている。天候や気温の影響を受けにくく、安定的な収穫が期待される。同社の農業用電解水素水整水器(還元野菜整水器)6台を導入している。



同ハウスを運営するJA南国市の農業生産法人「南国スタイル」は、年間の収穫量177トン(パプリカ77トン、ピーマン100トン)、年商約70百万円を見込んでいる。パプリカの国内市場は、韓国産など輸入品が大半を占めている。次世代型ハウスでは2017年2月からパブリカ・ピーマンの栽培を開始したが、還元水素水と水道水との間でパプリカの育成に有意差が見られた。南国スタイルは、協力農家などとともに、全国に先駆けて還元野菜の一大産地としたいと意気込んでいる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)


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