■テノックス<1905>の業績動向



3. コロナを機に明確になった課題

コロナ禍において、特に浮上した課題がある。工事粗利率の低下と工法ラインアップの拡大ニーズである。工事粗利率の低下は、コロナの影響によりホテルや商業施設といった建築物の一部で工事の中止や延期が見られるようになったことで、人口減少などを背景に将来の建設需要を厳しく見ていた一部中小事業者が目先の工事案件の確保を目的に安値受注に走ったため、受注段階での競争が激化したことが要因である。また、コロナ対策のためテレワークなど営業や打ち合わせが簡素化されたことで、ワンストップで検討できる幅広い工法ラインアップの提案がゼネコンから求められるようになってきた。こうしたことはもともと同社経営の間で課題視されていたことではあるが、コロナを機により明確になったため、下期からさっそく対応を始めていく方針である。



工事粗利率の低下に対しては、原価低減と高付加価値化を進める考えである。原価低減に関しては、事前の段取りを用意周到にすることで段取りの精度を上げ、工期の短縮やコスト削減につなげる考えである。例えば、1つの現場が終わっていちいち建機をセンターに戻さず、直接次の現場に送ることができれば工期もコストもセーブできる。これは、綿密な協議が同社にも顧客にも負担になるが、実現すれば同社のみならず顧客にとっても原価低減の恩恵を受けることができるのである。高付加価値化に向けては、すでに施工管理装置「VCCS」を導入しているが、こうした管理システムのブラッシュアップや新たなシステム開発によって施工品質を向上させ、「安心」という高付加価値サービスを押し出していく。中小事業者の集約化によっても課題の解消につながると予測できるが、これには長い時間がかかると思われる。



工法ラインアップの拡大ニーズには、事業領域の拡大で対応する方針である。同社は地盤改良工事と杭工事の両方を行っているが、地盤改良工事は深層が中心で杭工事は鋼管杭が主力である。これをそれぞれ浅層改良やコンクリート杭へとラインアップを増やす計画である。加えて、杭の引き抜きなどへと事業内容を拡張することができれば、顧客のワンストップ志向に対しより総合的な提案が可能となり、顧客とのコミュニケーションが広がって受注に有利に働くことになる。さらに言えば、工法ラインアップの拡大は将来の建設需要減少への対応策にもなっている(場所打ち杭は従来と工法が全く異なるので、現在は進出の検討をしていない模様である)。こうしたワンストップの提案力を強化するため、同社は現在、M&Aや提携を強力に推進している。



2020年10月、回転埋設工法であるHIT工法を開発するなど、長年関西を拠点に杭工事や杭抜工事、地盤改良工事などの基礎工事を手掛けてきた広島組、及びその子会社で土木建築用機械や工具の販売、修理、リースなどを行う亀竹産業(株)を完全子会社化した。広島組の持つ営業地盤と杭抜工事技術の取り込みが最大の目的と思われる。また、2020年12月には、日本ヒュームと業務及び資本提携契約を締結した。同社が持つ杭工事や地盤改良工事の技術と、日本ヒュームが持つコンクリート杭製造技術や施工技術を持ち寄ることでシナジーを発揮する考えだが、特に同社にとってはコンクリート杭の再強化につながる提携と言える。また、株式を相互に保有することにより、両社の長期的な提携関係の構築・推進を目指す。なお、連結業績への影響は、広島組と亀竹産業の子会社化については軽微、日本ヒュームとの提携については現時点で未定としているが、業績に重要な影響を及ぼすことが明らかになった場合には速やかに情報開示するとしている。





下期はコロナから巻き返しを期待

4. 2021年3月期業績見通し

2021年3月期の業績見通しについて、同社は売上高17,700百万円(前期比4.8%減)、営業利益660百万円(同42.1%減)、経常利益680百万円(同42.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益420百万円(同45.4%減)と見込んでいる。



同社の下期の業績予想を見ると、営業利益で643百万円(前年同期比18.8%増)と、上期のみならず前年同期と比較しても大きな改善となっている。これは下期に、商品売上高は減少が見込まれるが、一方で杭基礎工事、地盤改良工事ともに好採算の大型物件を予定しているためである。利益については、中小物件の受注環境が引き続き厳しいことから工事粗利率の低下を見込むが、売上回復により固定費を吸収できるようになるため、上期比較では大きく改善すると考えられる。また、広島組と亀竹産業の連結や、足元の業績が順調に推移していることも業績にプラスに働くと予想される。受注に関しては、対面営業活動は制限されるものの、予定している大型物件に関して今のところ大きな影響はない模様である。また、物流倉庫やデータセンター、再生可能エネルギー関連は、コロナ禍でも投資意欲が変わらず強いと見られる。但し、民間の設備投資の減少や建築計画の中止・延期などの懸念が依然残るため、先行きの受注動向については注視する必要があろう。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)