■中期経営計画



1. 中期経営計画の成果

テノックス<1905>は中期経営計画「To The Next Future 2018-2020」を策定し、創立50周年の2021年3月期に、売上高220億円、経常利益15億円、ROE8%以上を目指していた。ところが、中期経営計画最終年度にコロナが世界的に拡大、経済環境にはリーマンショック以上の影響があるかもしれないという状況となり、同社も中期経営計画の定量目標の達成が難しくなったといえる。しかし、定性目標は一定の成果を上げることができた。同社は、「テノックスブランドの向上と新たなステージに向けて」進化していくため、1)市場や顧客から求められる安全・品質面での信頼性の確保、2)新技術や新サービスの創出による新たなイノベーション、3)生産性の向上、4)受注力の強化、5)将来の中核セグメントとしての海外事業の橋頭堡づくり——といった5つの課題の解消を定性目標とした。その課題解消へ向けた目標別の重点施策と成果は次のとおりである。



1)については、現場力の強化、施工リスクの早期発見・早期対応、開発中の新たな施工管理装置への投資を重点施策とした。具体的には、施工マニュアルの改訂、独自の資格制度の再構築及び講習会・管理士試験の実施を進めたほか、運転席や施工管理モニターなど現場と関係部署を映像で結び施工状況をリアルタイムで可視化(見える化)するテノコラム施工管理装置「VCCS」の運用も推進した。こうした施工の高品質化・高付加価値化は、工事粗利率の向上につながると考えられる。



2)に関しては、ICT技術を取り入れた施工管理システムの実用化、施工品質のリアルタイム確認、外部との交流による技術開発といった新技術・新サービスに向けた施策を講じる一方、M&Aや研究開発など将来を見据えた積極投資も実施した。大学・研究機関との共同研究、基礎・地盤技術協議会などへの参加、杭・地盤改良技術の高度化(高品質化と環境適合)に向けた工法開発、現場実証試験の実施なども推進した。なかでもM&Aに関しては、同社工法・技術と補完関係にある企業のM&Aや業務及び資本提携を進めた。また、東京大学と大地震による液状化に対するテノコラム工法の効果に関する検証を、大手素材メーカーとは新材料を活用した工法改良の共同研究を進めた。



3)では、「働き方改革」の支援体制の整備や業務効率化システムの構築を進め、現場作業者の連休取得の励行、タブレットなどを利用した業務フローの見直し、顧客情報共有化のための名刺管理システムの導入など実績を積み重ねている。なかでも元請の理解を得ながら現場作業者の連休取得励行を推進、また、2022年4月の運用開始を目途に新基幹システムの開発も進めているところである。



4)は、技術営業力の向上による既存市場での受注量確保や、物流倉庫・土木物件をターゲットにした受注活動の強化を推進した。ガンテツパイル工法に関しては、土木コンサルタントへの営業が奏功して北陸新幹線の基礎工事に採用された実績があるが、これを他の鉄道に横展開することを進めている。その中で北海道新幹線延伸事業の事前施工試験では、北海道特有の地盤条件下での適用性を確認する段階まで進んだ。また、「技術提案検討チーム」を結成し、物流施設やデータセンター、再生可能エネルギー事業者への営業を強化しているところである。



5)に関しては、保有技術の海外展開と現地企業とのコラボレーションや、子会社TENOX ASIAのASEAN展開、海外要員と現地スタッフの人材育成を図った。成果としては、ベトナムでテノコラム工法の技術認証を取得したこと、そのため自社施工機を2台導入したことがあげられる。また、現地スタッフの日本研修及び日本語資格取得の奨励などを進めたほか、本社においてベトナム人の採用を実施した。



なお、2020年4月に、ESG経営の推進を目的に「事業企画部(ESG推進グループ)」を設立した。所有・運用する建設機械の燃料として、天然ガス由来の硫黄分を含まないパラフィン系燃料「GTL(Gas to Liquid)燃料」の使用を開始した。燃費は軽油と同等で、CO2、NOx(窒素酸化物)、PM(ばい煙・粉じん等の粒子物質)の排出量が少ないという特徴のある環境配慮型軽油代替燃料である。現在、東京機材センターに導入しているが、今後は杭打ち機などでの使用を拡大していく方針だ。





投資戦略は順調に進捗

2. 投資戦略と進捗

以上のような施策を実践するには相応の投資と資金が必要で、中期経営計画期間の3年間で30億円規模の投資を予定していた。投資の中身については、設備や新技術・装置、M&Aなど将来の成長につながる戦略的な投資を想定しており、この2年半で、設備投資に施工能力の向上を目的とした施工機械の入れ替えなどに1,476百万円を使用、研究開発投資にはAIやIoTなど新技術と施工管理システム装置「VCCS」そして教育など190百万円を支出した。あまり進んでいなかったM&Aについても、2021年3月期に入ると広島組と亀竹産業の子会社化、日本ヒュームとの業務及び資本提携が矢継ぎ早に発表された。現在、投資余力を数億円残していると推測されるが、コロナの影響を考えると、無理せず好条件・好タイミングを待つ方がよさそうだ。なお、資金調達に関しては、必要に応じて自己株式の活用や社債の発行、借入などを行う予定だが、ほとんどが手元資金で賄えると思われる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)