変わる食中毒の姿(8月6日)

 8月は食品衛生月間だ。食品は私たちの命や健康に密接に関わるため、その安全性が確保されなければならない。食品の衛生、特に食中毒予防の視点から、今月を毎日の食生活について点検する機会にしたい。 昨年の食中毒発生件数は1100件、患者数約2万人、死者数14人であった。発生件数と死者数は年々減少しているものの、患者数は1952(昭和27)年に食中毒統計を開始してから、年間2万人を切ったことがない。1件当たりの患者数は多くなっている。 食中毒の様相は、1997(平成9)年頃を境に大きく変わった。以前は食中毒原因物質にウイルスは含まれず、細菌、自然毒、化学物質、寄生虫であった。当時の発生原因は細菌が多く、夏場に集中する腸炎ビブリオ、サルモネラ菌が主流だった。 予防の第一歩はまず食材に菌を「増やさない」ことであったが、ウイルスが原因と疑われる有症事件がたびたび報告されるようになり、1997年に当時の厚生省(現厚生労働省)は、後に「ノロウイルス」となる小型球形ウイルスを食中毒原因物質に追加した。食品に少量付着したウイルスがヒトに感染し、腸管内に取り込まれ増殖するタイプの登場だ。腸管出血性大腸菌が猛威を振るった時期でもある。 さらに、1999年には飲食に起因する健康被害の食中毒として、感染症の起因菌であるコレラ菌、赤痢菌、チフス菌なども原因菌に指定した。 今日、食中毒患者数の7割はカンロバクター(細菌)とノロウイルスが主で年中発生している。 この20年間で、食中毒予防の基本は殺菌、消毒する「やっつける」「増やさない」に、「付けない」が加わった。 近年、生鮮魚介類、特にヒラメの生食で原因不明の食中毒を起こす事例が全国に発生した。厚生労働省はヒラメに寄生するクドア(寄生虫)による食中毒を2011年、世界に先駆けて発表した。養殖ヒラメの主な輸入元は韓国だが、クドア食中毒の法的な位置付けは日韓で違いがある。韓国政府は、クドアが国際的に食中毒を引き起こす原因とされていないなどの理由から、クドア食中毒を法的に認めていない。 輸入ヒラメは通常、検疫所で抜き取り検査され、わが国の基準に合致した場合に限り搬入が許可される。だが、韓国産養殖ヒラメは食品衛生法違反の可能性が高いとして、現在、集荷(ロット)ごとに検査を韓国側業者に義務付けている。クドアは魚介類に寄生するアニサキスと同様に加熱や冷凍処理で駆除できる。 ヒト、モノの移動が国際化する中で、これまで国内で報告されなかった新たな食中毒原因物質の発見が今後もあるだろう。検疫、監視の強化が求められる時代となった。決して油断できない。(阿部 正・福島学院大名誉教授)

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