東京電力福島第一原発の廃炉工程を示す「中長期ロードマップ」が昨年暮れに改定された。作業の遅れが相次いでいるにもかかわらず、政府と東電は事故発生後三十〜四十年間で廃炉を完了させる目標を維持した。実現性を疑問視する声は多い。

 原発事故から三月で十年目に入る。目標に照らせば、残り二十〜三十年に迫っている。「三十〜四十年」という大くくりの当初の目標を掲げ続けるのは、あまりに曖昧だ。作業全般の進み具合や課題を緻密に検証し、より現実的で具体的な完了時期を明らかにするよう求める。

 使用済み核燃料プールからの1、2号機の燃料取り出しは、従来の二〇二三(令和五)年度から最大五年も先延ばしされた。放射性物質の飛散を抑える対策を優先させるため、取り出しまでに時間を要するとの理由だ。安全確保に万全を期す方針自体に異論はない。

 ただ、両機の見直しは四回を数える。今回、さらに五年の遅れが出ても、なお全体の目標を修正しないのならば、達成できる見通しを示す責任がある。説明を尽くさなければ説得力がなく、理解も得られまい。

 2号機原子炉格納容器内で昨年二月、事故で溶け落ちた燃料(デブリ)とみられる堆積物への接触に成功した。これを受け、デブリの取り出しを二〇二一年に2号機から始める方針を盛り込んだ。

 しかし、1号機の内部調査がずれ込む見通しになるなど、最難関の作業は予断を許さない。デブリはどの場所にどの程度落ち、どのような性質や形状をしているのか。実態解明は困難が予想される。取り出したデブリの処理方法や処分先の検討も進めなければならない。

 最もあやふやなのは、廃炉の最終的な形が依然、固まっていない点だ。復興を進めるには、構内を更地にして有効活用できる環境づくりが不可欠と言える。二〇一一(平成二十三)年十二月の工程表策定時、原子炉施設の解体が記されていた。今は明記されていない。東電は「いろいろな意見がある」と背景を説明する。廃炉の到達点が定まらない中で完了目標を掲げても現実味に欠ける。

 中間貯蔵施設の除染廃棄物を県外で最終処分する問題も監視を怠れない。法的に約束された三十年後の期限は三月で二十五年後に縮まる。しかし、検討は進んでいるとは言いがたい。政府、東電は節目感を強く持ち、積み残しの課題に今年こそ明確な道筋を付けるべきだ。(五十嵐稔)