東日本大震災の被災三県を巡る東京五輪の聖火展示は二十三日、岩手県花巻市から大船渡市に舞台を移した。市防災観光交流センター「おおふなぽーと」前広場にともされた「復興の火」は津波被災者や遺族らを慰めた。訪れた人々の思いに触れた。(本社報道部・金沢葉月)

 「一緒に見に来たかった」。大船渡市の災害公営住宅に住む無職木下邦男さん(83)は揺れる聖火を見つめながらつぶやいた。

 津波で兄と姉を亡くした。今でも日常のふとした瞬間に、二人の面影が浮かぶ。二十六日にJヴィレッジ(楢葉・広野町)を出発する聖火リレーはテレビで見守る予定で「復興五輪を福島で成し遂げてほしい」と願った。

 聖火の前には、展示終了間際まで市民らの長い列ができた。大船渡市の主婦久保和歌子さん(41)は復興の火をバックに長男亮成君(11)、次男薫平君(7つ)を写真に収めた。「聖火を間近で見られるなんて一生に一度。子どもたちに見せてあげたかった」と笑顔を見せた。亮成君も「(聖火は)きれいで暖かくて、心も温まった」とうれしそうだった。

 「気仙大工」と呼ばれる地元の建設関係者が伝統の「上棟式」を披露した。気仙産のスギとマツが使用された骨組みの上に、五色の旗がたなびき、五輪を連想させていた。

 宮城、岩手の被災者の思いが託された聖火は二十四日、いよいよ福島県入りする。


■24日、福島県入り

 ギリシャから空路で宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地に到着し、宮城、岩手両県を巡った聖火は二十四、二十五の両日、福島県に展示される。

 二十四日は福島市のJR福島駅東口駅前広場で午後二時半から式典を行い、聖火を迎え入れる。ランタンの運搬から聖火皿への点火を地元の小中学生が担う。聖火ランナーのインタビューや記念撮影を行う。展示は午後三時〜午後五時まで。

 二十五日はいわき市小名浜のアクアマリンパークでお披露目する。式典を午後二時半から行い、午後三時〜午後五時まで聖火を一般公開する。

 式典は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、県、市の主催。


■新型コロナ対策を準備 知事

 内堀雅雄知事は二十三日の定例記者会見で、東京五輪の聖火が福島、宮城、岩手三県を巡る「復興の火」の県内での運営方法について、想定以上の観覧者を集めた仙台市の例も踏まえ、新型コロナウイルスの感染防止対策などを検討していると説明した。

 内堀知事は復興の火の展示ではマスク着用や消毒液の設置、見学の順番を待つ人の間隔を前後一メートル以上開けて整理・誘導するなど過度な密集状態を生まない対応を取ると説明。組織委や関係機関、会場となる福島、いわき両市と連携し、まざまな状況を想定して準備を進めるとした。