東京五輪聖火リレーは五輪の延期に合わせて仕切り直しとなった。大会組織委員会は二十四日の記者会見で、本県からスタートする国内のルートや走者は現在の枠組みを尊重するとした。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を乗り越えてきた被災地の姿を世界に伝え、復興を後押しする大会理念に照らし、ルートや走者は縮小せずに当初の計画通りに実施するよう改めて求めたい。

 国内全体の出発地として二十六日に本県のJヴィレッジから始まる聖火リレーの行方を県や市町村、多くの県民が案じてきた。これに対して組織委は予定通り実施するとの説明を重ねてきた。五輪開催の延期を含む国際オリンピック委員会(IOC)の新方針決定を受けた二十三日の会見でも、見直しには言及しなかった。

 ところがその後、トーチを掲げたランナーによるリレーを取りやめ、聖火を車両で運ぶ形式変更を突然、打ち出した。幅広い層の関係者に影響を及ぼすにもかかわらず、何の打診や予告もないままの方針転換に戸惑いや不満が広がった。車両による巡回が復興や地域振興に結び付くのか疑問の声も上がった。

 五輪開催の在り方を四週間以内に決定するIOCの新方針について、安倍晋三首相は「完全な形での実施という(自らの)方針に沿うものだ。アスリートの皆さんのことを第一に考え、延期の判断も行わざるを得ない」との見解を示した。

 五輪開催の可否はIOC、聖火リレーは日本側が最終判断する。主体は異なっても、「復興五輪」を掲げる以上、被災地にとって五輪と聖火リレーは一体だ。五輪の主役が選手なら、聖火リレーの担い手はトーチをつなぐ県民、もり立てる市町村や地域住民である点を忘れてはならない。

 県内の聖火ランナーは二十六市町村で計二百六十五個人・集団に上る。一人一人が喜びをかみしめ、古里やゆかりの地を駆ける日を心待ちにしてきた。

 聖火リレーを巡る組織委の一連の対応はあまりに一方的だった。日程調整などに関する県や関係市町村、聖火ランナーへの説明は今後、丁寧に進める必要がある。

 森喜朗会長は会見で聖火を当面、本県で保管する意向を内堀雅雄知事に伝え、内堀知事が快諾したことも明らかにした。県は聖火を復興の弾みにするべきだ。延期された期間を活用し、聖火リレーを復興とともに観光振興や地域づくりに生かす検討も一層深めてほしい。(五十嵐 稔)